RPA導入はシステム開発ではない

RPAの導入を従来型のシステムと同じように対応している企業を見かけますが、RPAはシステム導入と言うより業務運用そのものです。

一旦導入して終わりではなく、そこからが終わる事のない業務改善活動のスタートであり、RPAはロボット社員と言われるようにロボットが代替する業務オペレーションそのものなのです。

業務はビジネス環境の変化に応じて常に変化していきますので、そのビジネス環境変化への柔軟な運用対応が必要になってきます。

RPA導入とシステム開発の違い

RPAツールはあくまでソフトウエアロボであるため従来のシステム開発と同様に扱われ、同じような進め方・アプローチで考えられがちですが、従来の大規模システム開発とRPAソフトウエアの導入には大きな違いがあります。

システム開発は業務を固める

従来のサーバー型の大規模システム開発プロジェクトの殆どはIT部門や企画部門が主導していました。それは、サーバー開発が技術的に難しく、どうしても大規模なシステム開発を行える大手SI(システム・インテグレータ)に依頼する進め方になり、

多くの場合、大手システムベンダーに都合が良く、高額を支払う結果になっていた

これらのSIはゼネコンであり、開発する業務要件・機能を確定したら手戻りしたくないのですから、開発に入ってからの変更には追加費用を請求し、簡単に変更できないようにしてきました。(ウォーターフォール開発モデルと言います)

この様なITベンダー側の都合もあり、手戻りがあったとしても基本的に「準委任契約」しかしませんので、期間が延びればその分クライアントに請求するだけです。この様な事を把握している企業のIT部門ほ極力後から変更が発生しないように「要件定義フェーズ」の中で業務を確定しようとします

システム開発の契約類型

 

結果的に将来あるべき自社業務の全体が見えていない段階で業務を確定し、サーバー開発が始まって変更が出来ない状況になってしまいます。一旦システム開発プロジェクトが完了した後も自社ではメンテナンス出来ず、開発したベンダーに高額で保守・運用も委託し続ける事になります。

従来のサーバー型システム開発は技術的に難しすぎる

 

この様な点もあり、従来のシステム開発は業務を固め、硬直化する効果があります。しかし、この変化の激しい時代に一旦基幹システムを開発したら何年もほぼ変更出来ないようなビジネススピードで競合に勝ち抜いていける業界は少ないと思われます。

 

RPAは業務を柔軟化する

RPAは同じソフトウエアではありますが、逆に業務を柔軟にする効果があるものだと考えています。それは、主に下のような特徴を持っているためです。

◆ RPAは枯れた技術の集合

RPAはソフトウエアとして決して難しいものではありません。Excelマクロを使いこなせる派遣社員でも十分開発可能なものですし、Windows の初期バージョンからあるような機能でWindowsをロボットが間接的に操作します。

 

上のリンクを読んで頂ければご理解頂けるかと思いますが、RPAは考え方として新しいだけで、技術的には枯れた安定した技術の集合なのです。

 

◆ RPAはプログラム開発が不要

また、RPAロボ(シナリオと言っています)を開発するのも、業務フローを一段詳細化したレベルのフローとして開発し、基本的にプログラムは一行も書く必要がありません

お絵かきソフトのような感覚でシナリオフローの部品をドラッグ・アンド・ドロップすると、内部ではそれに対応したプログラムブロックが生成されていくため、そのプログラムを確認する事は可能ですが、変更しても意味がありません。

なぜなら、プログラムを直接修正しても、フローを変更すると書き換えられてしまうからです。

プログラムを開発する場合に必ず必要となる内部変数の扱い繰り返し等のフロー制御を理解していると有利な面があり、プログラム開発の経験があると使いこなせるようになるのが速い面はあるかと思います。

 

◆ 業務ユーザー自身で開発・変更が可能

RPAはこの様な開発スタイルですので、業務ユーザーが自分でシナリオを開発し、保守していけるツールなのです。

業務ユーザーは上記のようにして十分使いやすい状態で固められていない基幹システム外部のWebシステム取引先とのやりとりの中で、日々こうしたらもう少し楽になるのになぞこんなバカげた手作業を毎日繰り返さなければいけないのか、と考えている事が多くあるものです。

その様なPCに向かて毎日行っている繰り返し雑務を自動化するのがRPAであり、業務ユーザー自身が工夫してシナリオ開発・変更しながら徐々に効率化していくべきなのです。

ビジネスは生き物であり、日々変わっていく。業務ユーザー自身が日々工夫し、進化・効率化していくべき。

 

RPAは明確なROIを出せる

従来の大規模システム開発では、企画・予算化の時点でその導入効果を試算するかと思いますが、実際にそのシステムを導入した後にその本当の効果の計測・評価まで出来ている会社は少ないと思います。

大規模になり、関わる要素が増えてくると、単純にそのシステムだけの効果とは言い難い点もありますし、基幹システムのように開発に何年も掛けていたのでは、ビジネス環境自体が変わってしまいますので、更に判り難くなってしまいます。

その点、RPAは現状の対象業務に毎日何時間を要していて、RPA化によってどれだけ効率化されたのか、ほぼ1:1に対応させる事が可能で判り易く、明確にROIを出せるツールなのです。

 

RPA導入は業務効率化の始まり

大規模システム開発はあまりに開発工数・費用や期間が大きなものとなるため、一旦システム開発が終了したところで力尽きてしまう事が多いようです。

システム開発プロジェクト自体が目的ではないかと思える程です。

それに比べてRPAはシナリオ開発自体簡単で、会社全体・業務全体をいっぺんに進める必要がありませんので、効果がありそうな部分から徐々にシナリオ開発していけばいいものです。むしろ、

RPAシナリオ開発は業務効率化の始まりであり、業務の変化や更なる効率化に向けた始まりである

と考えるべきです。

 

RPAは運用が重要

外部環境が変化する

ビジネスは生き物であり、常に変化します。仕入れ先を増やしたり、新規顧客からの受注、出荷のために新しい伝票フォームに対応する必要が発生したりと外部は自社の都合でコントロール出来ない事が殆どであると考えるべきです。

外部のWebシステムから定期的に情報を検索・抽出していたら、そのWebサイトの作りが変わってしまったり取引先との情報のやり取りの方式、手順が変わったりと言ったシステム的な変化も日常茶飯事です。

この様な変化があるため、従来のサーバー型システム開発ではその部分の開発をあきらめ、手作業になっていたりします。それが、現状の非効率な手作業の実態であり、そこを柔軟に自動化するのがRPAなのです。

 

内部環境が変化する

新製品を発売するため、新たな業務が発生したりもしますし、周辺システムの都合で手作業での修正が発生したり、人事組織の変更、人事異動などが原因で手作業を余儀なくされる事が多々あります。

従来型のシステム開発では、基幹システムのこの様な変更に数週間~数ヶ月を要したり、柔軟なシステム変更が不得意ですので、どうしても手作業になってしまっているのです。

RPAやAIによる付加価値を付けたERPへ

 

積極的な業務改善

企業を変えていこうとする場合にシステムを変えてしまうやり方があります。7Sと言う企業を定義する方法論では、会社は7つのSで構成されていて、ハードSとソフトSに分かれるとしています。

企業文化や価値観と言った長い間にその会社で培われてきた、「直接変える事が難しいもの」はソフトSと言い、逆に「組織」「戦略」「システム」などは直接変える事が出来るハードSと言っています。

この様に会社を変革する場合に使われるのがシステム変革でもあり、上記の「業務を固める」凝固剤の役割もしていますが、RPAはこの業務変革の際に起きた業務の隙間やひずみを柔軟に埋める事が出来ます

RPAを起爆剤に全体最適・効率化する

 

RPAソフトウエアが変化する

RPAソフトウエアは新しいカテゴリーであり日々開発が進んでいますので、RPAツール自体のバージョンアップによって、機能が追加されていく事を考慮しておく必要があります。

新しバージョンが出るのを待ってから導入などと考えていると、恐らく当分そのチャンスは訪れないでしょうし、非効率な業務オペレーションで競争優位にたつ事は出来ないでしょう。

やはり、過渡期のツールだと割り切り、何時でも変更する覚悟で手頃なRPAソフトウエアを選択するのが賢いように思います。

 

柔軟性と保守性のバランスが重要

RPAは業務ユーザー自身がビジネス環境の変化に応じて柔軟にシナリオ開発、メンテナンスしていけるツールだと書きましたが、逆に言うとちょっとしたPC周りの状況変化で動作しなくなる可能性がある、とも言えます。

その辺りをカバーし、保守性を担保する意味でも、下記のような機能でRPAロボを管理出来ることが重要になってきます。

  • 各PCでどの様なRPAシナリオが何時動いているのか
  • そのシナリオの実行結果はどうだったのか
  • 各シナリオのインプット情報、アウトプット情報は何か
  • 各シナリオはどの様な業務の流れ(業務処理)を実施するものか
  • RPAの内部変数の意味合い

など様々ですが、出来ればあまりRPAロボの数が多くならないうちにRPAロボ全体をどの様に管理していくのか、管理ロボを導入するのかなどを考えておくことをお勧めしています。

RPA運用体制を整え変化対応力をつける

RPAに求められる機能

RPAはシステム間で抜けた業務や、柔軟な対応が必要となる「柔らかい業務」を自動化するツールですので、一旦シナリオを作成して終わりにならない点はご説明しました。そして、業務ユーザーはその様なRPAロボを使ってどう業務を自動化、効率化していくかを考えるのが仕事になっていきいます

日本の特殊な雇用慣行は崩壊する

 

そうなった時にRPAソフトウエア自体に求められる機能は、下記のようなものではないかと思われます。

  • RPAシナリオを含めた会社全体の業務プロセスを可視化する機能
  • RPAシナリオの実行管理
  • どのPCでどのRPAシナリオを実行するかのディスパッチ
  • 実行結果ログを管理し、改善していけるようにする機能

こう考えると、サーバー開発型のRPAが持つ管理機能が良さそうですが、RPAを初めて使う使いだし時点でサーバー型のRPAは多少ハードルが高く、金額的にも大きなものになってしまいます

 

よって弊社では、WinActorをお勧めしています。使いだしはシナリオ開発が可能なライセンスで90万円/年、シナリオ実行のみであれば24万円/年程度ですので、月額にすると2万円です。

そしてRPAロボが増えてきて管理が大変になってきたらWinActorロボを管理する管理ロボ(WinDirector)を導入すれば良いのです。

 

人員体制

上記のようにRPAは一旦導入しておわりでは無く、むしろ終わりのない業務効率追求の始まりなのです。こう考えると、ソフトウエアとしてのRPAツールの選定が重要ではなく、組織としてRPAを使いこなしていくスキルが求められます

RPA・AI に向く業務プロセスに変革する

 

RPAは人事や経理などの間接業務だけではなく、自社のコア業務の改善に使うツールですので、基本的に社外に丸投げは出来ないと考えるべきです。

 

やはり、RPA管理スキルを含めた社員の業務スキルを向上する事で、地道に自社の業務オペレーションを改善出来る体制を構築・強化していくのが遠回りなようで近道なのだと思います。

 

 

 

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