RPAは業務ユーザー主導で導入する

企業変革をしよう、業務を改善しようとした場合に、近年では必ずと言って良いほどITが絡んできます。ビジネスプロセスの変革だけで大きな改革・改善は望み難いところまで来ていて、IT技術の発達の恩恵を最大限に享受する方向でビジネスモデルを構築することが多い為です。

しかし、RPAの出現によって、この状況が変化しつつあります。業務ユーザーが主導してビジネスの大きな変革を出来るようになってきているのです。

従来の企業変革プロジェクト

多くはIT部門が主導していた

ひと昔前から、IT部門をビジネスシステムと呼んだりして、IT部門が積極的に業務に関わっていくことで企業変革をドライブしていく考え方が有りました。

この考え方は間違っていないのだとは思いますが、現実はビジネス戦略を立案できるわけでも無く最新のIT技術を持つ外部のITベンダーから情報をとったり、提案依頼を出す程度しか出来ていない会社が殆どでした。

この状況は無理もないのだと思います。自社で最新のITを導入したとしても一回限りで、その技術を他社に使いまわし熟成させることが出来ない以上そうなるのも当然です。

それもこれも、サーバー型の難しい技術を使ったシステム開発が主流だったからです。ユーザー企業がそれらの最新技術を入手・検証出来るはずもなく、やはり外部に頼るしかなかったのだと思います。

従来のサーバー型開発は技術的に難し過ぎた

やはり、自分の手に余るものは自分でコントロール出来ず、人に頼るしかなくなるため良くありません。

 

従来の進め方の問題点

この様に最新のITテクノロジーを活用する意味では仕方なかった面もありますが、外部に頼りきりのIT部門が業務変革の主導的な立場でプロジェクトを進めるのが無理があったのだと思います。

結局は外部のITベンダーやコンサルティング会社の意のままにされ、大金を搾取され続けてきたのです。(「これを俗にベンダーロックイン」と言われています)

 

これらのIT会社は、今でもウォーターフォール開発モデルと言われる手法でIT開発を進めます。絶対にIT会社は損をしないモデルで都合が良いのです。

 

RPAは業務ユーザーが主導する

RPAシナリオ作成は業務ユーザーで可能

RPAの導入とは言っても、ツールの使い方自体は然程難しいものではありません。業務フローの一段レベルを落として詳細化したプログラムフローを書くイメージです。RPAの導入で難しいにはむしろ業務整理や導入展開プロジェクトの進め方のほうです。

この点を見落としていた為にプロジェクトが失敗する例が最近増えているように感じます。「RPAツールの使い方が簡単」と「導入が簡単」は全く違います。プロジェクトとしてはむしろ人の感情(リストラ絡みと見られがちで)の問題が絡み、かなり難しい部類だと思われます。

 

 

RPAはソフトウエアと考えない

RPAを従来からIT部門が導入プロジェクトとして進めてきたサーバー型のITシステムととらえているとその本質を見誤ってしまいます。どちらかと言えば、Excel やWord などの業務ユーザーが自信で使いこなすオフィスツールであり、その導入にIT部門が主導してプロジェクト導入する必要はありません。

 

そして、RPAがExcelなどと大きく違うのは、従来型のシステム導入の結果、細切れになってしまった基幹システムや業務的に繋がっていないフローの間を埋め、繋ぐ役割をするのがRPAだと言う点です。

やっと業務を中心に、業務が主導してツールを使いこなし今現在の業務に最適化出来る環境が整ってきたのです。

RPAシナリオは業務フローそのものであり、RPAツールはロボットの同僚

と考えるべきです。

 

ビジネス環境の変化に応じて業務フローを変えていく

ビジネス環境の変化は益々加速しているように感じます。情報の伝わり方拡散スピードはインターネットの発展やSNSなどの個人が情報を発信できる環境が整ってきた事で爆発的に早くなってきています。

企業としては、その環境変化に追従していかざるを得ない状況で、コンシューマービジネスに限らず、従来は殆ど変化が無かったBtoBの巨大な装置産業にまで及んでいます。

今こうしている間にもどこかで自社製品や自社のブランド価値を棄損することを意図した悪質な書き込みや誹謗中傷がSNSで流されているか判らない状況です。

 

また、これまでは、市場への新規参入者は皆が知っている日本国内の大企業程度を気にしていれば良かったかも知れませんが、現在ではインターネットを通じて地球の裏側から自社が知らない内に自社を上回る品質、サービスを低価格で提案している会社があるかも知れません

この様に、

ビジネス環境の変化に応じて、柔軟に即応・順応出来た会社のみが生き残れる

時代になってきており、RPAは正に業務ユーザー自身が柔軟にシナリオを作成・変更していける最適なツールなのです。

RPA業務効率化は永遠に続く

 

RPA導入におけるIT部門の役割

それでは、IT部門はRPA導入プロジェクトにおいてどの様な役割を担えば良いかですが、非常に重要な役目があります。それは、

RPAに関するノウハウの蓄積・拡散

業務ユーザー部門が主導して個々にRPAを導入していくと、どうしても当該部門内にRPAを活用しての業務効率化ノウハウが滞留してしまう事になってしまいます。

やはり、RPAの使い方やその活用ノウハウなどのドキュメントを整備、更新したり、社内共有していく活動が非常に重要になってきますので、IT部門が部門横断的に進めるべきです。

業務部門には自分の部門最適化のイメージが強く、その様なインセンティブはあまり働きませんので、IT部門の非常に重要な役割ではないかと考えられます。

 

RPA導入効果の社内プロモーション

ある業務部門で試験的にRPAを導入して、業務効率化やその他の定性的な効果を実感出来たら、次の段階として社内に横展開していくことになりますが、社内で上手く予算措置をしたり、RPAの導入効果を訴求プロモーションしていく必要があります。

この様な社内にアピール出来る資料にまとめたり、発表して合意形成していく活動に長けているのはやはりIT部門ではないかと思います。

 

全社展開計画の策定

社内で予算措置をすると一言で言っても、意思決定するほうとしてはこう言いたくなります。

  • 全部で費用いくらかかるのか
  • スケジュールはどの程度かかるのか
  • RPAの導入推進体制はどうするのか
  • 業務効率化の効果はどの位見込めるのか
  • 同業他社はどうしているのか

などなどですが、この様なシステムの全社展開を数多く経験しているのがIT部門であり、やはりこの部分もIT部門の力が必要となってきます。

 

RPAロボの標準化・モジュール化

そして、社内でのRPAツールの横展開が進んでくると、やはりいろいろな非効率な面が見えてきます。

  • 個別に毎回1からRPAシナリオを作成していくRPAシナリオ作成の非効率性
  • メンテナンス性の悪さ
  • RPAシナリオの品質が安定しない

など様々な気付きがあると思いますが、この点もやはりIT部門が主導して次の様なIT部門ならではの知識・経験を生かして存在感を発揮すべきです。

  • ドキュメントのフォーマット、記載内容の統一・標準化
  • 内部変数の名前や使い方の標準化
  • RPAシナリオの標準化・モジュール化
  • ログの残し方

など

RPAロボの実行監視

社内でRPAロボが相当数働くようになってくると、どこのPCでどの様なRPAロボがいつ動いている(動くべき)かが次第に見え難くなってきます。あるRPAシナリオが動作してデータの前処理をした後に、次のRPAロボが起動されるべき、などの前後関係や受け渡すデータの相互依存性があったりもします。

社外Webシステムの処理遅延やネットワークの不具合など、何かの状況が設計時とは異なっただけでRPAシナリオが上手く動かなくなったりする事もありますので、やはりRPAの稼働状況を監視し、エラー発生の場合の修正などをする必要があります。

この様な、

RPAロボの可視化もIT部門の役割

 

RPAライセンスの契約窓口

殆どのRPAソフトウエアが1年の使用許諾契約になっているかと思いますが、ソフトウエアベンダーとの契約はやはりIT部門が得意なのだと思います。

そして、RPAソフトウエアとしてのライセンス在庫を管理し、計画的に契約数を増やしていったり、実際はあまり稼働していないRPAライセンスを他の部署に割当てたりとRPAライセンスの最適数量管理もIT部門が行うべきものかと思います。

人がPCを操作する代わりにRPAロボットがPCを操作しているので、複数人が同時にPC操作を出来ないように、複数のRPAロボットも同時にPC操作はできません

しかし、RPAシナリオ間の前後関係やデータの依存関係を整理し、起動される時間をうまく調整することは可能ですので、RPAソフトウエアライセンスの契約を最低限にすることは可能です。

 

RPA導入ROIの測定・評価

RPAはその投資対効果(ROI)を算出し易く、明確に効果を測定できるソリューションです。RPAによる自動化の対象にしようとしている業務に業務ユーザーが現状どの程度の時間を使っているのか、そして、RPAで自動化した後にどの程度の時間で完了するのか、計測が可能です。

この様な定量効果を計測し、RPAの導入効果を明らかにしておくことは以降のRPAロボの展開をスムーズに進める上でも非常に重要なこととなります。

 

そして、RPAの効果としては上記の業務効率化のような定量効果に加えて、業務品質を向上するなどの定性的な効果も大きなものがあります。この辺りも含めてRPAの導入効果を整理し、その効果に見合う投資額はどの程度までなのか自社なりの基準を明確に持っておく事が重要になります。

 

投資対効果に関しては、他社の事例はあまり役に立ちません。なぜなら、RPAの効果は自動化する業務の量に大きく依存し、会社の規模や基幹システムなどの周辺システムも各社で全く状況が異なるためです。

 

やはり、自社でRPAを導入する効果を試算し、自社なりの基準や考え方を整理しておくしかないのです。

 

 

 

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