現代は経営の意思決定スピードが勝負を決すると言っても過言ではありません。あなたの会社はまだ次月の後半になって始めて財務報告が見える状況ではないでしょうか?
前月のP/Lが見えてきてから経営判断をしていたのでは遅すぎ、打ち手は2か月、3か月遅れてしまいます。現代はスピードが重要なのです。
大企業の突然死が増えている
最近、歴史のある大企業の突然死が増えているように感じます。従来の経営手法では、中小企業であれば、運転資金のキャッシュフローを見ていればある程度は大丈夫、大企業であれば、P/L(プロフィット&ロス ステートメント)を見ていて、敵対的買収に注意すれば大丈夫。
などなど、ものの本や中小企業診断士の試験などで教えられるような一定の手法・考え方がありました。しかし、そのようなところではない、投資した海外原子力事業にまつわる簿外債務が突然出てきたり、ネット上で自社の商品の品質などに関して叩かれていろことを把握しておらず、後手にまわっただけで会社存亡の危機になるのです。
現代の経営ではスピードが重要になっている
このような、経営環境の変化にどの様に対応していけば良いのでしょうか? 私は、従来から言われているPDCAサイクルや、社員の目標管理など1年、短くても半年を基準とした管理手法が現在の経営環境のスピードに間に合っていないのだろうと考えています。
余談ですが、米軍最強と言われる海兵隊の管理手法はOODAループと言われるもので、その時点で得られる情報を基に機動的に現場で瞬時に判断していく訓練をされているそうです。
OODAループの話は別の機会においておいて、少なくとも自社内の財務状況がリアルタイムに近い時間間隔で見えている会社も少ないのではないかと思いますので、その辺りの話をしたいと思います。
リアルタイム財務情報と言えば
リアルタイム財務情報で思いつくのはERP、そしてSAPではないでしょか。SAP社がドイツで操業されたのが1972年で、日本に入ってきたのが1992年ですので、既に日本でも25年以上になり、大企業にはすっかり定着した基幹システムソフトになりました。
しかし、私の知る限り本当にERPとして使いこなし、リアルタイムに財務状況を見れている会社は少ないのではないかと思います。
SAPが悪い訳ではありません。むしろ、大好きなシステムであり、その考え方や、絶対にロジックを曲げない頑固さ、武骨さは正にドイツ製品そのもので、使っていると次第に手に馴染んでくる一流の大工道具のようです。
しかし、その崇高な理想に対して実際の使われ方は財務会計機能だけ導入するような使い方が日本では多くなっています。これでは、購買、生産、販売などの物の動きをリアルタイムに仕訳し、財務に繋げていくERPの本質が全く生かされていません。
様々な理由があるのだろうとは思いますが、最も大きいのはERPの導入があまりに困難を伴い、プロジェクトが長期に及ぶせいかと思います。余程のリーダーシップ・精神力が無ければやりきれないのです。
ERPの導入に何年も掛けている時代ではない
ここで、先に述べた経営環境が変化し、スピード感が重要だと言う話に戻ると、ERPシステムの導入自体に1年、2年を掛けていては、経営環境の変化についていけないのです。
ERPを否定するわけではありませんが、財務状況をリアルタイムに把握するだけであれば、各種物の動きから仕訳の発生するタイミングを整理し、その周期、タイミングに応じて連携すれば良いのだと最近は思っています。
仮に、在庫・購買、製造、販売から人事管理までフルにERPを導入出来たとしても、発生をリアルタイムで把握できない限りリアルタイムにはならない
例をあげると、殆どのERPでは標準原価と言われる予め年次などで決めた単価で日々入出庫が転記されます。よって実際には数量の動きに短くても1か月、多くの会社では年次単価を掛け合わせた金額で転記された金額しか実際原価は見れないと思います。
標準原価を決めようとすると、一定期間の購買、製造原価から割り戻す必要がありますが、製造原価に算入する工賃や、電気代、人件費、減価償却費なども変動しますし、その後に比率で配賦しますので、その配賦係数の影響のほうが大きかったりします。
そもそも発生が月次なものは、それよりも短い時間間隔で見ても同じ値なのは当然です。社員が使った出張経費などもリアルタイムに精算するわけでもありませんし、売掛金の入金サイトもまちまちなのが現実です。
RPAでアドオン開発を代替
ERP導入を加速し、費用を削減するためにもアドオン開発を削減するのが近道です。幸い、最近はRPAなどの普及でかなりのERPへのアドオン開発を減らせるようになってきています。
これにより業務の柔軟性が増し、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる能力をも獲得できるのです。
I/FもRPAで代替可能
RPAを使う事はI/F開発の削減にもつながります。従来型のシステム開発が静的な固まった業務に合わせて設計・開発されるのに対して、RPAはそれらの間を柔軟につなぐこちが出来るからです。
RPAによるテスト自動化
また、ERPの導入プロジェクトの後半において重要なウエイトを占めるのがシナリオテストではないかと思いますが、この部分にもRPAが貢献できます。予め決められたビジネスシナリオとデータパターンに沿って、テストを繰り返すことはRPAにとって最も得意な部類の作業です。
そして、プログラム修正後の再テストや、クラウド環境においてどうしても避けられない稼働後の定期的な再テストにもRPAは威力を発揮します。
要は経営判断に必要な単位で十分、むしろスピードのほうが重要
要はリアルタイムに変化しない金額、値は定数として設定されれば良いだけです。そう考えると、リアルに発生を把握出来る金額はそう多くなく、そこだけをリアルタイムに連携してレポートすればいいのではないでしょうか。
まして、経営判断をしていくのに、1円単位の正確性は不要ですし、通常の大企業では千円、100万円単位位で把握出来れば十分で、重要なのはタイムリーに財務状況や課題を把握できることだと思います。
1円単位までの正確性に拘り、月末に〆てから月次決算に20日以上かけ、前月の財務状況を2か月遅れで見ても既に手遅れのことが多いのです。繰り返しになりますが、財務報告としては当然必要なのですが、多くの間接費は予め決めた配賦係数に基づく数字で、どの程度意味があるか判りません。