RPAには大きく分類して、サーバー開発型、PC導入型、クラウド型の3種類があります。サーバー開発型のように大規模なプロジェクト体制を組んで数千万円の費用を掛けてサーバー開発するのであれば、RPA導入のROI(投資対効果)は半減してしまいます。
やはりRPA導入のポイントは業務ユーザーが自分の日常業務を手軽に自動化できる部分にあるのです。
RPAに大規模プロジェクトは不要
RPAを導入するための大規模なプロジェクト体制を組んで、従来の大規模システム開発のイメージで進めるように勧める一部のコンサルティング会社やSI(システム・インテグレータ)があるようです。
大規模なRPAサーバー開発は本末転倒
一部の都市銀行の定型業務のように同じ事務処理が大量に存在し、現在でもそれらが手作業で実施されている会社はまだ多いのだと思います。しかし、この様な企業はごく一部であって、殆どの会社では既にこの様な大量定型処理はシステムとして開発・実装されているのが現実です。
または、この様な大量な定型化出来るデータ処理は従来型システムとして開発したほうが安定動作できます。
従って、この様なサーバー型RPAを使った大規模サーバー開発を提案してくる会社は自社の都合でその様な従来型のシステム開発を勧めているとしか考えられません。
RPAに大規模な開発プロジェクトは不要。費用をかけるべきは業務整理
こちらにITベンダーを選定する場合に必要となる視点や注意点をご紹介しています。 ⇒
スピード・柔軟性を失わせる
ビジネス環境は日々変化し、その変化のスピードは益々早くなっている感じがします。自社の社内業務を見ても、先週まではこの業務処理・進め方で良かったのが、取引先の都合や新しいテクノロジーなどによって通用しなくなるような事が日常で起きています。
情報システムは業務を固める効果があるため、パッケージソフトの中にあまりにアドオンプログラムを作り込んだりしていると、そのサーバー開発をしている間に業務要件が変わってしまって不要な機能になってしまったり、業務を硬直化させてしまう恐れがあります。
大規模なサーバー型システム開発は業務を硬直化させ、スピード、柔軟性を失わせる
したがって、サーバー型のRPAソフトを使った大規模なシステム開発は既に時代遅れであり、現代のビジネス変化のスピードに合わないと考えるべきです。
ROIを引き下げる
大規模なRPA導入プロジェクト体制を組んで大金を投入したとしても、当然ですが業務効率化の効果は一定以上にはなりません。RPAは現在社員が手作業で行っている業務を自動化するツールですので、その現在の業務工数(*単価)以上の効率化効果は有り得ないのです。
売上を伸ばすのは基本的に青天井ですが、社員が0になることは考え難く、RPAによって自動化したとしても、そこで浮いた時間をより生産的な「考える、発想する」業務に振り向けて、そこから付加価値が生まれない限りは残業削減程度になってしまうのです。
コスト削減には上限がある以上、それに見合う投資を考えていくことが必要になってきます。これをあまり考えずに従来のサーバー型システム開発のイメージでプロジェクトを進めていたのでは、折角のRPAも低いROI(投資対効果)に留まってしまいます。
継続的な業務効率化がポイント
最近は大手のコンサルティング各社がRPAの導入プロジェクトに参入しているようですが、これらのコンサルティング会社は単にRPAソフトを導入していたのでは儲からないため、必ず下記のような従来の業務改革のイメージで提案してきます。
- As-Is (現状)調査
- To-Be(将来)のあるべき業務設計
- ブループリント・PJチャーター作成
本当に全社規模の業務改革をしたいのであれば当然これで良いのですが、単に「業務ユーザーの日々の繰り返し業務をRPAによって自動化したい」と考えているだけであれば、完全にやりすぎですし、RPA導入とは別に「本来の業務改革の目的」を明確にした上で実施すべきです。
そして、本来は業務改革とはビジネスプロセス全体を見直し、「ガラガラポン」するようなもので、現状業務に捕らわれず1から見直しするものです。一方、RPAによる業務効率化はあくまで現状業務プロセスの流れに沿った効率化であって、業務改革とは似て非なるものです。
言い方を変えると、RPAによる業務効率化は「業務効率の改善活動」であって、日本人が得意な現場の小改善活動を地道に継続する活動なのです。よって、RPAによる業務効率化に終わりはなく、永遠に続くのです。
現状業務のまま自動化するRPA導入とは
RPAは全社規模で、などとあまり考えずに手軽に業務ユーザーが自身の日常業務を自動化できるところが良いところなのです。
業務ユーザー自身でシナリオ開発
RPAソフトウエアの仕組みを知るとご理解頂けると思いますが、基本的には業務ユーザー自身がRPAシナリオを作成し、メンテナンスしていけるツールです。
Excelマクロ、VBAで業務の一部を自動化されている企業も多いかと思いますが、RPAは更に簡単でプログラミングすら必要ないのです。RPAソフトウエアの特徴を下記に記しておきますが、正に業務ユーザーに待望されていたユーザーよりの自動化ツールがRPAなのです。
- プログラミング不要
- Windows上のアプリケーションは殆ど自動化可能
- 既存のシステムとシステムの間を繋ぐ
- 柔軟・手軽にRPAシナリオを作成可能
RPAライセンスは価格を抑える
一方、RPAソフトウエアには下記の3タイプがあり、そのライセンス価格にも大きな開きがありますがRPAとしての機能には殆ど差はありません。やはり自分の日常的な業務を手軽に自動化するツールですので、価格も手頃なものを選択されるのが良いかと思います。
- サーバー開発型
- PC導入型
- クラウド型
運用費用を抑える
RPAソフトウエアの場合は、その導入工数(費用)は一般的に従来のサーバー型のシステム開発に比べ1/5程度と言われていますが、運用にはそれなりの工数・費用を要すると考えておく必要がありそうです。
RPAシナリオの作り方にもよりますが、ビジネス環境の変化や、周辺システムの画面構成、取引先の増加など、様々な要因でRPAのメンテナンスをしなければならなくなります。
やはり導入後のRPAロボの運用工数がどの程度発生するのか、当初から想定しておく必要があります。
業務を効率化するツールですので、当然それ以上の運用工数・費用が掛かってしまっては意味がありませんので、そんな事はありませんが、やはり従来サーバー型でシステム開発したシステムの半分程度は見込んでおきましょう。
向いているRPAソフトウエア選定のポイント
弊社では、NTTデータ様開発のRPAツールであるWinActorをお勧めしています。それは下記のような特徴があるためです。
国内の導入数
WinActor の日本国内での導入数はトップクラスとなっています。正確な数字は公表されていませんし、随時変動しているものですが他に国内導入数が多いRPAツールは UiPath、BluePrism、AutomationAnywhere 辺りかと思われます。
手軽に使える価格
WinActor は業務ユーザーが自分のPCにインストールして、手軽に使い始められるPC導入型のRPAソフトウエアです。そして、価格も開発ライセンスで90万円/年程度、シナリオ実行のみであれば24万円/年ですので、気軽にトライできるレベルではないかと思います。
日本語でのサポート体制
この点は忘れがちですが、結構重要な要素かと思います。どんなに機能が充実していても国内での日本語サポートやドキュメントが十分に提供されていない海外のソフトウエアを使って苦労した経験がある方も多いのではないかと思います。
RPAロボが増えた時のメンテナンス性
これは、RPAロボの運用体制にも関わる部分ですが、過去のExcelマクロやノーツDBの時のように無管理状態で増え続け、どこでどの様なマクロが動いているのかすら把握出来ない状況になってしまう危険性がRPAにもあります。
WinAcotrの場合はその点、PC導入型のRPAとして手軽に業務ユーザーレベルで始められ、効果を実感してRPAが増えてきたら WinDirector と言うRPAロボを管理する管理ロボが提供されていますので、そうなってから、こちらのWinDirector の導入を検討すれば良いのです。
RPAは運用がポイントになる
上でRPAは導入して終わりではない点をご説明しましたが、ここで重要になるのがRPAをどの様に運用していくのか、その運用体制です。RPAは業務ユーザー自身のPCに導入して使う事も出来ますが、「人間と同時に使う」事はできません。
なぜなら、RPAロボは人がパソコンを使うのと同じように画面を見て判断し、マウスやキーボードを使って操作しますので、人間と同時使おうとするとPCは思った通りの動きをしないでしょう。
よって、夜間にRPAロボがPCを使うというやり方はありますが、基本的にはRPAロボには専用のPCが必要になると考えたほうが良いかと思います。この様に、RPAの場合、「ロボット社員を新たに雇ったのと同様な人事管理をすべき」、とよく言われています。
私は、そこまでする必要があるとは思いませんが、ある程度のRPAロボの数になってきたら、それなりの社内運用体制を組んで管理していくのが良いかと思っています。
Excelレガシー問題と言われている、メンテナンス不能状態を回避する意識が重要