RPAを起爆剤に全体最適・効率化する

RPAはルールに従ってPC作業を自動化する業務効率化のツールですが、これでどの様に業務改革するのか不思議に思われる方も多いかと思います。RPAのイメージは、単に業務ユーザーが自分の日々の繰り返し作業を効率化するExcelマクロのイメージだからです。

こちらでは、その辺りのご説明をしています。

RPAの導入方法には2通りある

様々なRPAツールが販売されていますが、ツールとしては大きく3種類があります。業務ユーザー自身でシナリオを作成して業務効率化するPC導入型、もしくはクラウド型。もう1つは大規模プロジェクトとしてサーバー開発し、大量の作業を自動化するサーバー開発型です。

 

そして、RPA導入の仕方としては以下の2通りのやり方が有るかと思います。

日々のPCルーチンワークを自動化する方法

ロングテールと言われる、個々の業務量として然程無いが、種類が多い業務に適用します。こちらが皆さんがイメージされるRPAのイメージに近いのではないかと思います。

long-tail

 

各社員が自分の仕事の範囲内で日々残業などしてこなしている業務の内、ルールが明確で繰り返し行う作業をRPAで自動化するものです。よってその導入プロジェクト自体も各社員が自信の範囲でExcelマクロを作成するように作成します。(RPAはプログラムの必要はありません

ツールとしては、安価手軽に導入可能クラウド型かもしくはPC導入型が向いています。

 

全社業務を整理し、繰り返し業務を自動化する

こちらは、全社的又はグループ全体で大量の繰り返し処理を行っている業務を行うような場合で、ある程度の業務量が纏まっている必要があります。

RPA導入プロジェクト自体もトップ主導で大規模なプロジェクト体制を組んで実施します。必然的にRPAツールとしてはサーバー開発型が対象となります。

もしくは、RPAの実行シナリオをサーバーから管理出来るRPAツールもありますので、これを使って、夜間空いている社員のPCリソースを使って分散処理させる考え方もあるかと思います。

 

同様のアプローチは過去にも有った

間接業務集約化

SAPの導入プロジェクトを実施する目的として、よくあるのが間接業務集約化です。大規模なプロジェクト体制を組んでグループ全体の経理・財務、人事、総務などの間接部門の業務を整理して、横串で業務の性質・フローを組み直します。そして、複数の関連会社の同様な作業をまとめたり、切り出して外注したりします。

ある程度の規模の会社(グループ)であれば、各グループ会社に同じような間接部門を抱えており、そこを集約するのはかなりの効率化に繋がる場合も多いのです。そして、業務を切り直した後にSAP(ERP)を導入し、元の業務に戻らないように固定します。

この業務の凝固剤の役割をするのがERPなのです。ERPを使うと決めらえれた通りの作業(手順)手順で実施しなければ業務出来ないようになります。そのため、融通を効かせることが出来なくなり、凝固剤として適しているのです。

 

RPAは更に範囲が広い

上記のERPと同じような業務凝固剤の役割としてRPAを使うことが出来、その役割としてERPよりも優れている点が多々あります。

業務の適用範囲が広い

ERPの場合は会計帳簿に繋がる基幹システムの範囲が基本ですので、財務・経理、人事、購買・在庫、販売、生産などの取引を会計帳簿に記帳していく範囲になります。

予算管理や生産計画、需要・供給連鎖などのSCM計画などのやわらかい将来業務の範囲には向きませんので、機能は有りますが決して使ってはいけません。

 

業務を効率化出来る

言うまでもなく、RPAは業務を自動化・効率化するツールですので、こちらが本来のRPAのバリューです。そして大規模に繰り返し業務を纏めてそこにRPAを導入することで、更に導入効果が増大していきます。

 

基幹システムの間をつなげる

別建てで運用している生産管理システムMES、ERPやCRM、販売管理システムなどの大規模導入した基幹システムは業務フローを定義し、決められた通りに業務するように構築します。

 

しかし、これらの基幹システムの間にホワイトカラーが本来やるべき、将来に向けた考える業務(=やわらかい業務)があります。この固まった業務(=基幹システム)とやわらかい業務の間に、システム間を手作業で転記したり、Excelで計算するような作業が存在します

この間に隠れた手作業の内、考える業務ではなく、単にシステムからシステムに転記するような繰り返し業務や、インターネット検索した結果を転記するような繰り返し手作業をRPAで効率化出来るのです。

RPAがシステム間をつなぐ

 

安価に導入できる

安価とは言ってもサーバー開発型のRPAであれば、数百万円~数千万円は導入に必要となります。しかし、考えてみると、過去のERP導入に数億円~数十億円を投入していたのを考えると、業務効率化の効果が明らかにあるため、相対的には安価と言えるのかも知れません。

RPAの主な種類と価格

AI機械学習に繋がる

導入の仕方にもよりますが、上記のような直接業務を含めた業務に対して、データ間の論理・因果、業務フローを整理することはAIを導入する場合に非常に重要となります。

AI機械学習の業務適用は相当先の話、と考えられている企業もあるかとは思いますが、そう遠くない将来に、何処の会社も普通にAIを業務に取り入れて効率化するようになり、AIと言う言葉すら使われないくなるものと思われます。

当たり前のことだからです。そして、最近特に思うのが、殆どの会社にはAIに使えるデータが無いことです。

殆どの会社にはAIに使えるデータが無い

RPA導入は業務改革の起爆剤になり得る

導入プロジェクトスコープ選定が重要

RPA導入を業務改革を行う上での起爆剤として使おうと考えると、その導入範囲(スコープ)の選択が重要となります。導入効果を考えた場合、極力広い業務範囲を選択するほうが有利になりますが、それだけ大規模なプロジェクトとなってしまいます

逆にあまりに狭いスコープとすると、効果は限定的で、変革していない周囲の業務に引きずられて元に戻ってしまう懸念が出てきます。

やはり、下記の視点と自社のビジネスを考慮してそのスコープを選定することが非常に重要となります。

  • あまりに狭い範囲で、その規模、部署などであれば簡単だろう、と思わせない主要部門・領域
  • 確実に導入効果を創出し、全社に効果展開出来る
  • 当初に業務を整理し、最終的な展開範囲を見定めた上で、やり切れる適切な規模で始め、展開出来る

 

基幹システムへの作り込みはいい加減止めましょう

上記のように、基幹システムの間の業務を埋めるツールとしてRPAを使う事を考えると、逆に基幹システムの中に作り込む必要性が薄れてきます。なぜなら、人が手作業で入力するから、2画面、3画面を1画面にまとめたい、使いづらい、解りにくい画面を作り直す事になってしまうのです。

人が手入力するのでなく、RPAが自動的に入力作業をするのであれば、標準画面のままで十分です。多少使いづらくてもRPAは文句を言いません。ERP等の基幹システムにアドオン開発するのは非常に高価です。

そして、あまりにアドオン開発が多いと、数年に1回のアップグレード時に更に費用が嵩み、下手をするとアップグレードすら出来ない事態となってしまうのです。

 

RPAによる大規模な業務効率化とその先

RPAにより大規模に業務を自動化・効率化すると、その過程で業務フローを調査・整理する必要が生じます。そして、そこで扱うデータ間の因果・論理を明確にして、ルール化する必要が生じます

正にこの活動がその先にあるAI機械学習、ディープラーニングを使った自動化、レコメンデーションや業務最適化の世界に繋がります。なぜなら、RPAはルールベースで動きますが、その明確化されたルール(データの論理・因果)をAIに学習させる必要があるからです。

この点を明確に理解し、論理・因果関係を含めたデータの準備をしていった企業だけがその世界に近づけるのです。

 

 

 

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