RPAツールの導入を単なる従来同様のシステム開発と捉えると大きな間違いです。それはRPAロボ社員を採用し、その業務遂行能力を生かした永遠に続く業務効率改善活動の始まりであり、単にシステムを導入して終わりではありません。業務そのものであり、知恵の競い合いなのです。
RPAと従来のシステム導入の違い
業務カバー範囲の違い
従来のシステム開発プロジェクトでは、プロジェクト計画書(チャーター)を作成し、その時点で明確にそのプロジェクトで対象とする業務・システム・人事組織などの範囲(スコープ)を定義していました。
開発するシステムの機能や周辺システムとの情報のやり取りに関してもほぼ見えている状況でプロジェクトを開始しますので、どの程度の開発規模・金額になるのかある程度想定出来ていたのです。
しかし、RPAは、この様な「カッチリ」仕様を確定出来るシステムが既に入っている状況で、
- それらのシステムとシステムの間を繋ぐ(埋める)
- 業務に例外が多く、人による柔軟な業務運用が必用な業務
- 高額を掛けてシステム開発するのに見合わない業務
言わば、従来のシステム開発に洩れた(実装されなかった)業務を自動化するツールです。
同一業務の量の違い
従来のサーバー型システム開では、高い金額を投資してシステム開発する訳ですから、必然的にある程度の業務(データ量)がある業務に限定されていました。
しかし、RPAの場合はいわゆるロングテールと言われる、個々の業務量としては然程でもないがその種類が大量にある業務を対象に自動化をするツールです。
従って、従来型のシステム開発スタイルでシステム実装するには割に合わないような小ぶりな業務などが殆どになります。
柔軟性が求められる
RPAロボが受け持つ業務はいわゆる「固まっていない業務」です。従来型のシステムは大規模にプロジェクト体制を組み、長期に渡って組織的にシステム開発を行いますので、その実装業務(≒システム)の仕様もプロジェクトの初期段階で「カッチリ」と確定します。
これはシステム開発の進め方で言う「ウォーターフォール開発モデル」と言われるもので、基幹システムのように最初からほぼ作るべき機能が決まっていて、パッケージソフト等にその機能が盛り込まれているようなシステムはこれでも良いのだと思います。
しかし、RPAの場合はそれらの基幹システムに機能として盛り込めず、間に漏れた「こまごました業務」を柔軟に自動化するツールなのですから、やはり
小回りが効いて、状況に応じて柔軟に修正しながら業務ユーザーが使える必要がある
いわば、RPAはゲリラ戦と考えるのが正しい認識だと思います。
RPA導入は永遠に続く業務効率化の始まり
昔サプライチェーンのコンサルタントをしていた時に確かATカーニーのパートナーの誰かが言っていたのを思い出します。それは、
SCM業務改革は永遠に終わらない
と言うのがその主張でした。SCMの考え方には「後方配置」「引き付け生産・調達」など物流効率、財務効率を極大化する為の基本的な考え方があり、これがこの会社の最善であると言いきれる事は永遠になく、どんなに物流効率を改善したとしても更に上があると言うのです。
私はRPAに関しても、同じように「RPA業務効率化も永遠に終わりはない」ような気がしています。システム開発はいつか終わります。満足のいくものが出来たかどうかは別として、システムはいつかは完成し、使い始めるのです。
一方、RPA導入を業務効率の改善活動だと捉えると、上記のように永遠に終わりは無く、更に上の業務効率を追い求める姿勢を持ち続け、知恵を出し、RPAで効率化していく活動を継続する。正に、
RPAによる業務効率化の活動は永遠に終わらない
この事を認識して、「トヨタの現場改善」のように地道な改善活動を継続した企業だけが高いオペレーション効率・能力を獲得し、勝ち残るのだと思います。
自社のコア業務を外部委託する会社はない
コア業務とノンコア業務
コア業務とは、「その会社がその会社である由縁」であり、会社自体、言い換えれば、「直接業務の中で、競争の源泉となっている業務」です。逆にノンコア業務とは、直接業務であったとしても、自社が競争優位の源であると位置づけていない業務や間接業務のことです。
RPAはコア業務も受け持つ
RPAを導入して業務を効率化しようと考えられている企業の中には、どこの業務からRPA化するか悩まれている会社も多いかと思います。現在の業務を見回して、RPA化によって最も効率化出来そうな業務から着手すると言う考え方があります。
それはそれで間違っていないと思います。しかし、ここで1つ重要な視点を提起したいと思います。それは、
コア業務を極限まで効率化・最適化する
と言う視点です。全ての企業にあてはまる事実として、極端な話をするとノンコア業務は全て外部BPOなどに委託する事も可能なのです。
コア業務は外部委託出来ない
一方、コア業務はその会社が存在する由縁であり、そこを外部に依存する行為は自社の存在意義を失う行為であり、会社を売ってしまうか廃業する行為です。
よって、コア業務は外部に委託する事が出来ません。こう考えていくと極限まで効率化しようとした場合、コア業務以外は全て外部に委託する方向になります。最後まで残るのはコア業務だけであり、そこが自社の存在意義です。
効率だけを考えると、将来的にはコア業務以外は全て外部に委託し、自社はコア業務だけに専念して極限の効率化を追求していく方向に向かいます。
AI機械学習がRPAや産業用ロボットなどの手足と融合し、ほぼ自動で付加価値を生み出していくようになると、会社の形態もコア業務だけの小さな組織がアメーバ―的に結び付いて社会全体として最大の効率で動くようになるのだと思われます。
RPAは業務遂行能力(効率)そのもの
RPAは正にコア業務の遂行能力そのものを改善するツールなのです。当然、間接業務を含むノンコア業務の効率化も出来ますし、自社でそれらの業務をやっていく以上は効率化を進めていくのは当然です。
それでは最終的に残るコア業務なのですから、大規模にサーバー型のシステム開発をしてしまえばいいではないか、となりそうですが、現在のサーバー型の大規模システム開発をしてしまうには下記の様に、いくつかの問題点があります。
- 柔軟性が失われてしまう
- システム開発に長期間を要する
特に、上記の1.は問題です。先に述べたようにコア業務は常に改善を繰り返し、最適化していくべき業務です。大規模システム開発によって業務の柔軟性を失ってしまうのは企業として命取りになりかねません。
やはり、ビジネス環境の変化に対応して柔軟に変更し、即業務効率を改善していける使い良いRPAの様なツールで継続的に改善していくしかないのです。
自社でRPA運用能力を蓄えていくしかない
上記のような点を考えていくと、純粋なRPAシナリオ開発程度は外部に委託したとしても、
RPAで効率化するのは自社のコア業務そのものであり、自社の業務遂行能力(効率)を左右する
基本的には外部ベンダーに丸投げ出来るものではなく、RPAを含めた業務運営能力を継続的に高めていく努力が求められる。