最近、様々なところでWinActor は使えない、失敗プロジェクトが多いなどと言った言葉を見聞きするようになりました。これはWinActor に限ったことではなく、RPAやシステムツール全般に言えることだと思いますので、どうして使えないと言われるのか、その辺りをこちらではご説明しています。
日本語は難しい
「使えない」という言葉だけではありませんが、日本語の単語には1つの言葉に複数の意味があるので、文脈から判断する必要があります。ここではWinActor について次の2つの意味を考えてみたいと思います。
「使えない」≒ 役に立たない
新入社員や後輩などをつかまえて、「あいつは使えない!」という言い方をすると、恐らく意味合いとしては「自分にとって役に立たない」といった意味で使われています。WinActorについて、この使い方をすると、
- WinActor は自分にとって役に立たない
といった意味合いになりますので、あくまで自分が中心であり、人(よその会社)はどうであれ、その方には役に立たなかったのでしょう。そもそも、RPA(特にWinActor)は簡単のイメージが付きすぎていて、どうしてもプログラム開発経験が全く無い方が最初から独学でシナリオ作成しようしてしまうようです。
実際には少なくともVBA等のプログラム言語、特に最近のオブジェクト思考言語の開発経験がない方だと業務で実際に使えるレベルのシナリオを作成するのは困難でしょう。
よくRPAの動画で、自動記録の部分やフローのイメージ、動作イメージがネットでも掲載され、その動画を見ると行っている作業自体は簡単そうに見えて、自分にでも簡単に習得出来そうに感じてしまうのだと思います。
「使えない」≒ 使いこなせない
この「使えない」の使い方をした場合も結局は自分が中心であって、自分が「使いこなせなかった」のだと思います。ITに限らず、全ての道具に共通して言えることは結局、
どんなに素晴らしい道具を持っていても、「使う人次第」であり、使う人の腕がよければ三流の道具であっても一流の料理をつくれる
のだと思います。
Winアクターを使う側に問題がある
最初から独学でやろうとする
これはよくあるパターンなのですが、何ごとも「基本」があり、最初から全くの独学で使い方を探っていったのでは時間ばかり要して効率が悪く、回り道になるのは明らかです。ましてや、RPAの場合は新しいカテゴリーのソフトウエアであるため、そもそもどう動くべきなのかイメージし難いツールです。
本来はもっと楽に目的を達成できる機能があるにも拘わらず、かたっぱしから試してなんとか実現出来たとしても、本来の仕事がおろそかになるのが落ちです。最初は人から教わり、サンプルシナリオなどの流用出来る部品などは流用したり、不明点を聞ける状態をつくることが必要です。
業務を効率化するツールの使い方を覚えるのに時間を浪費しても意味がない。時間を買う考え方が必要
かと言って従来のIT開発の様に外部ITベンダーに丸投げするのもRPAの場合リスクが高いため、
やはり、自社(自分)で地道にスキルをつけて生き残る道を開拓していくしかないのだと思います。逃げていても、WinActorのツールの責任にしていても何も解決しません。社会が向かている方向性は明らかなのですから、むしろ時代に取り残され、気付いた時にはリストラか良くても社内失業は見えています。
付属ライブラリーはあくまでサンプル
この点も勘違いが多いようです。WinActorを購入するとライブラリータブに様々なツール(ノード)が入っていて、一見これらを組み合わせれば簡単にシナリオを作成出来そうに感じてしまいます。
しかし、このライブラリーはあくまでユーザーライブラリのサンプルの位置付けであって、本来この(ユーザ)ライブラリタブは
ユーザ自信が作成した自社業務を自動化する為に再利用する部品を入れておく
ことを想定しています。
あくまでサンプルであって、いざこの部品を使おうとすると機能が不十分であったり、使い方が判らなかったり、自社の使い方に合わなかったりします。当然の話なのですが、ここにも勘違いと言うか、「WinActorは簡単に使える」と言うイメージが過度に定着していて、ライセンスを購入してはみたものの、「使えない」≒「使いこなせない」となっているようです。
やはりライブラリーとして再利用できるような部品・モジュールを作成するにはそれなりのプログラム・システム開発のスキル、経験が必要となります。
エクセルマクロも使えないのでは自力は無理
現在の自社のITリテラシーのレベルを考えて、どこまで自社で行うかを決める必要があります。SIベンダーに全て丸投げで、Excelマクロすら使いこなせていない組織が全てを自前でRPA実装しようとしても明らかに無理があります。
RPAの場合、業務運用に密接に関わっているため最終的には自社でRPAのシナリオ開発・運用のノウハウを獲得すべきだと思いますが、やはり段階を踏む必要があるのでしょう。
事前の業務整理が肝心
実際のところ、RPAプロジェクトの失敗の原因は「業務整理が出来なために、RPAロボットが作れない、終わらない」ことが原因です。自社で業務整理は先ず出来ないと思っておいたほうが良いかと思います。なぜなら、
組織に属している人間が、組織を跨いで隣の部署まで巻き込んだ組織・プロセスの変更は出来ない。可能性があるのは、会社のトップだけ
また、どんなに優秀な外科医でも自分の腹を切る手術は出来ないのです。現状業務のままRPAシナリオを作成していけば、過去のEUCブームの時の二の舞(Excelレガシー問題)になってしまいます。
適切なプロジェクト体制が重要
プロジェクトを推進していく上で体制は非常に重要です。上記にも関わりますが、プロジェクト体制に誰が入っているかで社員は会社の本気度を感じ取り、組織の中の誰が言って業務・組織を変えようとしているのか、体制でプロジェクトの成否が決まると言っても過言ではありません。
その他、プロジェクトを推進していく上では少なくとも次の3要素(3S)を明確にしておく必要があります。
- スケジュール
- スコープ(範囲)
- スタッフィング(体制)
WinActor の使い方に問題がある
「出来る」と「向く」は違う
「何でも出来る」を鵜呑みにして何でも WinActor にやらせようとしてしまうことがあります。既にExcelマクロである程度自動化されている、流れが出来ているのであれば、人が行っているExcelマクロツールの操作を含む、大きな流れをRPAで自動化するような考え方が重要です。
現在のツールに問題があれば、構築し直す事を考えても良いかも知れませんが、あくまでRPAは「人が手作業でつないでいる単純繰返し作業を自動化するツール」だと割り切り、全てRPAで置き換えようと「向かない業務」まで取り込むべきではありません。
判断業務には向かない
この点はあらゆる場合を考えても断言できます。
複雑な業務上の判断、論理振り分けをRPAで行うのは自殺行為
RPAの考え方自体がプログラムフローの中で分岐(判断)を順次行っていく、逐次処理であり正にプログラムを書くように出来ています。
この様な作りで複雑な条件分岐を実装しては、見通しが利かず、この条件(入力)の時に結果がどうなるべきなのか一見して判らなくなってしまうのは明らかです。
多段階の条件分岐を順次追って行って初めて結果が判り、はたして結果が正しかったのか極めて分かり難いでしょう。
複雑な論理を組めば、論理矛盾や条件の抜け漏れが発生するのは明らかです。
ベンダー側に問題がある
失敗すると判っているのに WinActor のライセンスだけ売り逃げる
ITベンダーにいると、顧客側よりも明らかに多くの事例を見聞きすることになります。顧客が言っている進め方が明らかに失敗するパターンであっても自社の責任にならず、売上・利益だけを手に出来るのがライセンスだけを数多く販売することです。
この様なITベンダーからライセンスだけを購入するのであれば、安くダウンロード購入したほうが未だ良いと思います。ソフトウエアライセンスは何処から購入しても品質は同じなのです。
WinActor のシナリオ作成に対して高額請求する
RPAのシナリオ作成にも多少の経験値・ナウハウはありますが、言っても単にフローを書いて多少の設定をすれば動作するツールです。経験と技術情報などのバックサポートがあれば然程難しいもでもありません。
とは言っても半日程度の簡単な使い方のトレーニングを受けただけの派遣社員ではやはり無理らしいことが次第に解ってきました。どうもプログラム開発経験も殆ど無い派遣社員がRPAのエンジニアとして派遣され、現場で苦労している場合が多いようです。
儲からない保守サポートをしない
WinActor に限らずRPAは業務に密接に関わっているため、頻繁に変わってしまう業務に沿って変更(メンテナンス)していかなければ動き続けることはまずありません。そもそも保守の手間がかかるものなのですが、この部分では殆ど儲からないためライセンスだけを売り逃げる方向となってしまうのです。