いよいよ大企業でも間接部門、中間管理職の配置転換・リストラが始まっています。これまでは低金利で苦しくなった金融業界や経営不信の電機メーカーの話と考えていた人達も他人事ではいられなくなってきています。すぐそこまで来ているAI時代に向けてこれから環境が更に厳しくなっていくと考えられる中間管理職の生き残る道を考えていきたいと思います。
管理職の仕事とは
普段あまり意識することなく使ってる「管理職」という人達は具体的には何を管理する仕事(職務)なのでしょうか。他の会社に行っても通用する一般的なコミュニケーション能力や人間力のような、そのレベルを測り難いスキル(人間性)などは有るのだと思いますが、一般にいう技能・技術でないことは確かです。
管理職は何を管理するのか
◆ 経営の意思・方向性に沿ってリーダーシップを発揮する:情報を管理する
こう考えると、「なるほど」と思えます。組織(会社)が大きくなるとトップの考え・意思を直接コミュニケーションによってトップ自ら伝えることが難しくなってきます。
その間に階層(中間管理職)を設け、トップ(会社)の意思を伝達する媒介役を担う考え方です。確かにこの様な存在が必要な気がしてきます。しかし、それはトップの考えを曲げることなく正確に、それも会社全体の方向性に沿った形で自部門として担う・成すべき役割は何なのか、具体的に、的確に噛み砕いて部下に伝える能力が必要になります。
結構ハードルが高い役回りです。とかく隣の部門との分担・抜け漏れなどの垣根や上下関係など、組織が大きくなると難しい問題が発生してきます。この様な組織内の高度な連携役が出来る管理職は必要で、上層部に昇進していくのだと思います。
しかし、自部門の方針を考えて具体的な施策まで落とし込み、リード出来る管理職がどれだけいるでしょうか? この辺りが問題です。
◆ 部下に目標を設定し、評価・モチベートする:部下を管理する
管理する対象として、「部下を管理する」というのがあるかと思います。部下に年間・半期などの単位で達成すべき目標を設定して、その達成度を評価していく仕事です。部下の育成とも言えるかと思います。
部下にやる気を起こさせ、導く重要な役割ですので、人(部下)がいる間は必要な管理業務なのでしょう。しかし、そのモチベートすべき部下の大半がロボットに代わろうとしているのです。
急に人がゼロになる訳ではありませんが、AIや直近ではRPAの様なロボットは人間のように感情がありませので、モチベーションなどと言う不安定なものを意識する必要がありません。
管理職は経営職と実務者の間を埋める
中間管理職の役割として、この間を繋ぐ(埋める)ことも重要とされてきたかと思います。しかし、海外企業の今のトレンドは階層を減らしたフラットな組織で経営スピードを上げていく経営です。
グローバルに競争しているような業界では、コスト競争力・スピードを考えると日本企業もそちらの方向に進まざるをえないと考えられます。
また、単に情報伝達機能だけであればIT技術・ネットワークが発達した現在、メールやポータルサイトの掲示板、トップのビデオメッセージで十分か、むしろトップの思い、熱意はそのほうが伝わり易いのではないでしょいうか。
中間管理職の存在が経営の意思を間で曲げ、スピードを鈍化させている。
そして、ITの発展は常に中抜きをもたらしてきたと言う事実も無視できません。(SCM、eビジネス・・・)
RPAが苦手なルールに沿って判断する判断業務
会社(組織)が決めたルールに沿って判断し、部下にも遵守させていく仕事です。この様な「考える必要がない」業務ほどコンピュータに置き換わっていく可能性が高い仕事です。(現在でも人がやる必要がない)
特に明文化された明確なルールに沿って判断するのが得意なロボットが最近出てきています。
この様なルーチンワークの中で判断するような仕事が多い管理職は、むしろそのルールを作成し、相手と交渉することによって市場の変化に応じて変えていくような「考える」仕事に変わっていく必要があります。楽だからといつまでもルールに基づく(ルーチン)判断業務を自分でやっているとそれこそ危険です。
新しいこと(ビジネス)を創造する
この様な業務をしている方は最も管理職として価値が高く、先ずAIやRPAなどに代替される心配はありません。と言うかAIにはまず不可能なのですが、実際この様な付加価値の高い仕事が出来ている管理職社員がどの程度いるかが問題です。
AI・RPAで管理職が余剰になる流れは止められない
RPAの普及は製造現場への産業用ロボット普及と似ている
オフィスワークへのRPAロボットやAIの活用が今後益々増えてくるのは間違いなく、もう止めようがありません。それは1980年代に産業用ロボットが製造現場に急速に普及していった時期と似ています。
産業用ロボットに対して、「単に教えた通りに繰り返す単純作業しか出来ないロボットなんて使えない」、と最初は導入に対してネガティブだった製造現場の反応も、現在ではあえて人がやる必要がない単純繰返し作業を正確に文句も言わず繰り返すロボットを否定する人はいません。
むしろロボットに向かない作業を人がやる、分担が出来上がり世界一の生産効率を達成しているのです。RPAもこれらの産業用ロボットによく似ていて、人がやる必要がない単純繰返し作業を正確に繰り返します。違いは工場の製造現場かオフィスかの違いだけです。
人間は少なければ少ない程効率が良い
そもそも、資本効率だけを考えると人間は少なければ少ない程効率がよくなります。やはり人が一番高いのは明らかですので、その価格に見合った生産性(アウトプット)を出さなければ勝ち目はありません。ざっくり
- 一般社員:20~30万円/月
- 管理職:45~70万円/月
- RPAロボット:2~8万円/月
程度でしょうか。
早く気づき、自分の方向性を考えるべき
そもそも、長年続いてきた日本の特殊な雇用慣行である、新卒一括大量採用、終身雇用は高度成長期に形成され、当時は長期安定成長を支えた優れた仕組みだったのだと思います。
しかし、少なくとも国内市場で高度成長期のように市場が広がり右肩上がりに成長するような幻想を持っている企業も少ないでしょう。その様な環境の中で新卒一括大量採用した社員が全員管理職になれるはずがなく、人数が合わないことに早く気づくべきです。
管理だけをする人がいると言うことは、逆に言うと管理される人がその何倍もいる必要があります。その管理対象の大多数はAIやRPAなどのロボットに代わろうとしている状況なのですから、残った人間(社員)を管理する人間が何人必要となるかは計算するまでもありません。
環境に順応して変われる管理職のみが生き残れる
ビジネスは生き物
生存競争の原理はどこも・いつの時代も同じです。
ビジネス環境は常に変化し、その環境変化に順応して変わっていけた管理職のみが生き残れる。
恐らく現在管理職として働いている方であれば、転職適齢期を過ぎている方も多いかと思います。全員が管理職として生き残れるはずもなく、残席はわずかしかないと考えるべきです。
管理する対象の部下の多くが今後ロボットに代わっていくのですから、管理職は更にいらなくなります。むしろ必要なのは、そのロボットに教える業務ルール・プロセスを考えるか、仕事を教える(仕事の流れやルールを設定する)ことが出来る人材なのです。
専門(直接部門)のみの組織に向かう
方向性としては直接部門のみの組織(会社)の方向へ向かいます。水が高いところから低いところへ流れるように、その流れは恐らく止められません。
単純事務作業をやるだけの間接部門は恐らく切り出してBPOに委託され、残れても委託先の受発注・管理をする購買部門に近い存在のみが残ることでしょう。将来経営を担うであろうコア人材は社内に残すかとは思いますが、かなりの狭き門です。
扱っている商品・サービスや業種・業界、会社の形態にもよるとは思いますが、必要なのはとにかく直接部門とごく一部の戦略立案、経営・管理を担う人間だけで十分なのです。
しかし、こうして切り出される対象の間接部門の方々でも、その間接業務を専門に請け負う会社になれば、それこそが直接部門になるのです。当然市場競争にさらされ、厳しい面もあるかと思いますが、やりがいや工夫次第でコスト削減・効率化することが可能で、そこで利益を生み出していければ良いのです。
まとめ:管理職の生き残る道
◆ 実務能力を高める
元々外資系企業の殆どの管理職(マネージャ)はプレイング・マネージャです。外資系で管理だけをやっているマネージャは上層部のごく一部で、その他多くの中間管理職は管理業務をやりながら、部下よりもむしろ高いハードル(ターゲット)を設定されて自分で実務をやることを求められます。
若い時からその様な環境ですし、ターゲットを達成出来なければいつの間にかいなくなったりもしますが、その分専門性が身に付いていればその専門性を生かして転職も可能なので会社にしがみ付く必要がなくむしろ気楽です。
とにかく、過度に会社に依存し、しがみつくのが最も危険
◆ AI・RPAロボットを管理する側になる
これからはAIやRPAなどのロボットと共生できる人材が求められるのかも知れません。むしろその様な人しか生き残れない可能性が高いでしょう。
◆ クリエイティブな管理職を目指す
そして、本当に求められるのはクリエイティブな(ビジネスを創造できる)考える能力が高い管理職です。