ERPは導入過程のBPRに意味がある

ERP導入を単にシステムプロジェクトと捉えると、追加開発の山になるばかりか、導入すら失敗してしまいます。ERP導入は業務改革プロジェクトであり、変革したプロセスを元に戻らないように最後に固めるのがERPの役割です。

こちらでは、その辺りの考え方をご紹介しています。

ERPの単一機能を導入しても効果は薄い

ERPには財務・会計機能に加え、販売、購買・在庫、生産など多くの機能(モジュール)があります。これらのモジュールを単体で導入する会社がよくありますが、これは非常にもったいないことです。

販売だけとか生産だけなどであれば、もっとその業務に向いたパケージソフトが有りますし、そちらのほうが余程機能も豊富で使い易いと思われます。

なぜなら、ERPの売りは販売、購買、生産などの物の動きがリアルタイムに会計仕訳に反映される点であり、これを使わないのであれば、むしろ、この自動仕分け機能があるため融通がきかない堅物のシステムになってしまいます。

単に間違って入力してしまった伝票を取り消すだけでも、会計仕訳まで含めた修正を考えなければいけなくなってしまうようなことが発生します。

やはり、本当にERPを使いたければ、会計、販売、購買・在庫、生産な全体を使うことを考えたほうが良いかと思います。

 

ERPは導入する過程に価値がある

ERPシステムの開発・導入に2年、3年と掛けていたのでは、完成したころには既に業務は変わり、ビジネス環境も変化しており、遅すぎます。

 

これと矛盾するようですが、ERPはその導入過程でBPRして、既に必要性が薄くなった業務を整理したり、関連会社とダブっている業務を集約したりすることで、特に間接業務を効率化することに意味があると思います。

あくまで業務整理に時間と労力を割くわけで、システム開発自体に膨大な時間と労力、費用を掛けてはいけません。

逆にシステムはパッケージソフトの機能をそのまま受入れ、先ずはグローバルでやられている通りのプロセスで業務してみる事にして、追加開発はしない、位の覚悟で業務自体を変えていく意気込みが必要です。

そうでなければ、現状のスクラッチ開発したシステムと同じ機能を現場は要求し、結局追加開発の山になってしまいます。ERPはシステム導入プロジェクトではなく、業務整理プロジェクトなのです。

よって、どんなに安く見えてもシステム会社にERPのプロジェクトを丸投げで任せてはいけません。なぜなら、これらのIT会社にいるエンジニアは、基本的にプログラム開発をしたい人達だからです。

そして、基本的に業務に興味はありません。特に人の会社の業務には全く興味がないのです。

 

ERP導入の目的(例)

やはり、自社でプロジェクトを主導して業務を整理し、無駄な間接業務を削減していく、業務変革の強い意志を持つ必要があるのです。

そして、プロジェクト管理の方法論や課題・スケジュール管理などの付帯的な業務のサポートが欲しければ、コンサルティング会社にその部分は依頼し、業務を整理した結果、どうしてもグループ会社横断で必要な機能や既存システムとのインターフェースなどが必要となったら、その時点でITベンダーに開発のみを依頼しましょう。

それ以上をITベンダーに期待しても無駄です。基本的には、ITベンダーはパッケージソフトを売り、追加開発の工数を膨らませて売上を稼ぐのがビジネスモデルです。

自社の業務改革の問題なのであって、システム開発の問題ではありません。以下に実際のERP導入プロジェクトでよく目的とされるものを挙げておきます。業務を整理し、そこにERPをあてはめる事で、一旦変更した業務プロセスが元に戻らないように固定します。

決算早期化

よくあるERPの導入目的に、決算の早期化があります。通常の会社であれば、月次で帳簿を締めて、そこから月次で転記する費用や勘定間の調整などの月次決算業務を始め、15日~20日程度で前月のPL(Profit and Loss Statements)が明らかになります。これを10日、8日、5日と、より早期にPLを把握できるように期間短縮していくことです。

言い換えれば、経営指標となるPLのフィードバックを速めることで経営のスピードアップを図ることです。

通常、経理、財務の方にこの話をすると、それは無理、と一蹴され、出来ない理由を山ほど言われます。しかし、実際にそれを実現している会社もあり、このビジネス環境変化が速い時代によりリアルタイムで財務状況を把握する事がいかに重要かを考えて頂いたほうが良いかと思います。知恵とやる気次第です。

決算の数字が1ヶ月近くも見えないで経営することがどれほどの経営判断を鈍らせるか、とかく経理の方は1円単位での正確さで出さなければいけない、と言いますが、1,000円、100万円、10億円位の荒い速報値でも直ぐに把握できるようが重要なこともあります。

 

間接業務集約化

これもよくあるERP導入の目的ですが、こちらは複数あるグループ関連会社の似たような業務を整理して寄せていき、最終的には間接業務を外部のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の会社に外部委託したりします。

いきなりは難しかったりしますので、先ずは別会社に切り離してBPOの会社と合弁の会社を作ります。そこで、ぜい肉をそぎ落としてから丸ごと中国のオペレーションセンター等に業務委託したりします。

私がいたBPOの会社はそうして業務を丸ごと受託していました。

これの難しいところは、切り離される当の本人がプロジェクトを進めるリーダーだったり、もしくは間接業務を実際に受け持っていたりする人達ですので、その社員のモチベーションをどこに持っていくのか、やはり、これらのプロジェクトを推進するにはトップの強いリーダーシップが必要になります。

 

 

 

 

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