GPS・地図情報の活用で物流コストを大幅に削減できる

地図情報の活用は自動運転以外にも大きな可能性がある

私は以前、ある飲料メーカーから依頼されて次のようなシステムの開発に係わったことがあります。それは、車で自販機を回り飲料の充填、お金の回収をする、ルート配送のルートを地図情報に基づき日々ダイナミックに変更すると言うシステムでした。

当時は既に自動車のカーナビが普及し、感覚的にも途中で渋滞情報などを基に変更できる仕組みは効果があるのではないかと考えていました。

しかし、配送ルート計画を柔軟に変更したとしても、肝心の営業マンがその変更についていけなかった、と言うのが現実でした。

どうしても人は頭ではそのルートが最適だと理解していても、慣れた通りに回りたい、翌日のルートを変更されても明日の朝どこに出勤したらいいのか判らないのは不安、など、なかなか計算通り合理的にはいかないのです。

2020年代の初頭までには、自動車各社が自動運転車を市販する計画のようですが、それに伴って地図情報もより精緻なものに整備されようとしています。

町中の配送すべき店舗や自販機の位置を地図上に持てば、ほぼ無人での配送が実現できるかも知れません。地図情報は非常に大きな可能性を秘めていると思います。

GPSの精度は飛躍的に向上する

現在はアメリカの衛星に頼っている日本のGPSも、日本独自の測位衛星を打ち上げることで誤差が10センチ、と飛躍的に向上しそうです。

現在はビルの多い町中などでは正確に機能しない面がありますが、日本の上空にGPS衛星が常に複数台あることで、十分な精度で機能するようになるようです。

そうすると、今は車や携帯電話などのレベルですが、配送途中の商品ケースや、パレットなど多くの物の場所がかなりの精度で把握できるようになります。

GPSやジャイロ、加速度センサー、温度などの複数の測量を行えるデバイスも量産、小型化の恩恵で各段に安くなってきています。同様にRFIDなども現在は10円位はするものが、更に安く手に入るようになるかも知れません。

そうなれば、今は想像も出来ない新しいサービスが生まれることでしょうし、物流自体もかなり効率化され、宅配などもほぼ無人で届くようになるのかも知れません。

むしろ、受け取るほうの人の位置もGPSで把握出来ているのですから自宅まで届ける必要もなく、双方移動中の交点を自動計算し、どこかで受け取るのかも知れないです。

これまで実現出来なかったことがIoTにより現実的になる

先にも書きましたが、既に10年近く前から地図情報に基づく自動ルート計画の考え方は有りました。しかし、当時では難しかった下記のような点がありました。

通信の問題

上記の地図情報に基づく配送ルート計画ですが、実は自販機自体に無線通信設備を付けて、販売数量(=充填すべき数量)を吸い上げ、それに基づいて支店・営業所から持ち出す数を計算していました。

ここで大きな問題となっていたのが、通信キャリアに支払う通信費用です。大手通信キャリアの寡占状態で、当時はどうしようもない部分だったのですが、現在ではMVNOなどのデータ通信専用の格安SIMなどがあり、ほぼ問題にならないコストになってきています。

また、IoT技術の進展により、通信機器自体の費用もコンパクトで安価なものが多数出ていて、簡単にクラウドに接続しデータ通信することが可能となっています。

データ分析・計画システム開発費用、期間の問題

当時は自社のデータセンターに数十億円もする大型のコンピュータを設置し、数年掛けてシステムを開発していました。

しかし、現在ではボタン1つ押して契約すればいつでも使用出来て、不要になれば何時でも契約をやめることが出来るクラウド環境が主流となっています。これにより、初期投資も抑えられ、期間も大幅に短縮できるようになってきているのです。

クラウド上にはデータベースや、SaaSと言われる様々なビジネスアプリケーションやデータ分析ツール類が何時でも使える状態で準備されています。

自社で初期投資して大規模なシステムを開発するリスクを負う必要はなく、小規模な効果検証から入れるのです。これは大きなメリットであり、初期投資費用をどの様に回収するのか、など考えなくて済みます。

そもそも、従来のやり方でシステム開発していたのでは、構想・予算取りからベンダー選定までで、通常2,3年は掛かっていたのではないでしょうか。

そして小規模なシステムでも1年程度は開発にかかり、実際に効果が出るか検証出来るようになるのはその後になっていました。

そして、その後5年、10年掛けて投資を回収していたのです。あまりにスピード感が無く、そうしている間に世の中の状況は変わってしまうのではないかと思います。

人の問題

やはり、なんと言っても人の問題が一番難しそうに感じます。仮に地図情報を基に自動でルート配送計画を変更し、翌日どこを回るのか判らない、配送途中で次に向かう場所が変更になる、など、人が何処までついていけるかが問題です。

そうなった時は配送の車もAIによる自動運転になって、ルートセールスマンは横に乗っていて、ついた場所で荷卸し、自販機充填などをするだけかも知れません。

そうなると、その荷卸しだけの人は要るのか、となりそうですし、何れにしても人の問題が一番難しそうなのは確かなようです。

これらの殆どは今後数年以内に解決し、現実的になると思われます。

IoT・AIコンセプト策定

 

 

 

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