CRMは全社の意識改革として名刺管理から導入する

CRMは、マーケティング、営業、カスタマーサービスの機能全体を通して使って初めて本当の価値を発揮します。

CRMはどこから導入すべきか

CRMは顧客のライフサイクル全体を管理して初めて大きな効果が出てくるため、マーケティングからフィールドサービスまで通して使って効果が出るのは確かですが、全てを同時に導入するのも結構大変です。

私は数あるモジュールの内、どこから導入すべきか、と言ったご質問や、導入効果を早期に得たい、というご要望に対して、名刺管理(ソフトウエアベンダーによっては顧客管理と呼ぶかも知れないです)をお勧めしています。

最近よく日本のクラウド型名刺管理サービスのテレビCM等を目にするようになったと感じる方も多いのではないかと思います。

コマーシャルの中でも、社員や社長が個人的な付き合いで名刺交換をしていた見込客のキーマンの名刺を個人的に持っていて、連携・共有していなかったために失注したのか、「それ、はやく言ってよ!」と俳優が下を向きながら言う、あれです。

日本人にはCRMの営業案件管理などよりも、名刺交換した情報を社内で共有する、と言ったほうがピンと来やすいのだと思います。

どうして社内での名刺情報管理が進まないのか

単に名刺交換した相手を社内で情報共有する、と言うと簡単に聞こえますが、一定以上の規模になると結構出来ている会社は少ないと思います。

と言うより、これが出来ている会社を私は見た事がありません。これはなぜでしょうか? このような理由ではないかと考えています。

  1. 営業部門以外の社員には名刺情報を社内共有する意識が低く、そのインセンティブが働かない
  2. システム的に社内で名刺情報を共有する仕組みになっていない。仕組みが出来ていても、交換した名刺の手入力が手間
  3. 入力が負荷になり、間違いが発生したり、タイムリーに入力されないケースが多い
  4. 名刺交換した相手が人事異動や転職したような場合のトレースが難しい
  5. 営業のセクショナリズムがあり、営業所や支店レベルで名刺情報が閉じている

これらの名刺情報を社内共有する上での阻害要因の中で、最近になって技術的、経済的に現実的となってきたものが多いことに気付くと思います。

上記2.3.などは、最近スマートフォンを1人1台(以上?)持つようになり、殆どの機種にカメラ機能が付いていると思います。

名刺交換したら直ぐにその名刺をカメラで撮影すれば、画像認識で会社名、名前、役職、電話番号、住所、メールアドレス等全て文字として読み取り、自動的に整理してくれるソフトがあります。

上記4.も、会社名や名前などから恐らく同じ人物ではないか、テキストマイニング処理をして自動抽出する事が可能です。

そして大きいのがモバイルを含めた高速ネットワーク環境が整ってきたことで、クラウド上の名刺管理サービスをストレスなく使えるようになったことでしょう。

やはり、難しいのは上記の1.5.と言った人の意識や、組織に絡む部分のように感じます。

営業マンは個々に売上げのターゲットを持っているのが普通ですし、製造や購買部門、経理や人事などの間接部門の方には営業的な責任はなく、意識が低いのが普通だと思います。

この辺りの、全社員に対して売上・利益に対する意識付けをしていったり、その結果としての会社業績があって、社員の給料に影響するのだ、と言う認識を植え付けていくような啓蒙活動が必要なのだと思われます。

CRMは名刺管理から導入して早期に効果を刈り取る

この人の意識を変えていくような活動には時間を要する事は周知のことと思いますし、これを変革していく為に、経営者の意思で変更可能な人事・組織や評価制度、報酬制度、情報システムなどの変更を通して、社員に伝えていく。

もしくは、経営理念、行動指針などに盛り込み浸透させ意識改革していくのだと思います。時間が掛かりそうですが、それだけに明らかに効果が期待でき、全てが完全にならなければ効果が無い、と言うものでもありませんので、今日からでも始めるべきだと思います。

ある社員が個人的な付き合いで交換した名刺を通して、全く関連の無かった他部門の営業マンとの連携が出来たり、全く違った製品・サービスを扱っている部門どおしで連携して相互にシナジー効果を生んだり、といった好事例が生まれてくると、社内にその様な気運が盛り上がり、社内が活性化してくるような効果もあるものです。

FacebookやTwitterなどのSNSなどの活用も含めて、社内外の人的な輪が広がるだけでも何か新しい発見があったり、新商品のアイディアが生まれたりするのかも知れません。

このような訳で、真っ先に導入するとすれば浸透に時間もかかり、一部分からでも効果が期待できる名刺管理から始めるべきだろう、と私は考えています。

 

 

 

 

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