IoT・AI社会に欠落している人材・スキル

すぐそこまで来ている、インダストリー4.0と言われているIoTやAIが普通に実用化されている社会を考えた時に、現在のIT企業の構造、枠組みを根本的に変えていく必要があります

そうでなければ、日本のユーザ企業は取り残されてしまうと考えられます。

日本の学校で教えてくれること

特にアメリカの有名な私立大学では、リベラルアーツ教育と言われる専門分野にとらわれることなく、日本で言う文系・理系の枠を超えた広い一般教養を教える少数精鋭の大学があるそうです。

それらの大学を卒業した人たちが政治家などとして活躍しているのですが、殆どの日本教育は、高校の時に選択した文系・理系と、理系であればそれぞれの専門分野の知識を大学・大学院で学ぶのが一般的なのだと思います。

特に理系では高校2年位の時に一生の専門分野を決めるのですから、その先にある職業をイメージ出来ないのも無理はないように思います。

また、今社会で求められ、必要とされているのは大学の学部、学科を跨いだ、もしくはその間にすっぽり抜けた部分のように思います。例えば下記のような分野が挙げられるかと思います。

  • 医療と工学の間にある、生命工学の分野
  • 法学と工学の間にある、特許訴訟、IT訴訟などに対応する弁護士、裁判官
  • 農学、獣医学などと医学の間にある遺伝子組み換え作物などの技術
  • 経済学(証券、保険などの金融)と理学部数学・物理系の間にあるアクチュアリーなどの統計データ分析官

など他にもたくさんあるように思います。

 

今後のIoT・AI社会で必要となるスキル

インダストリー4.0などと言われ、すごそこまで来ているIoT・AIが普通に使われる社会を考えると、実はここにも一般企業、IT企業の中にすっぽり抜けた分野があります。

 

IT会社で抜けている機能

先ずIT会社に目を向けると、これまで多くのIT会社では、組込み系、制御系のエンジニアを別会社に分離してきた歴史があります。これは主に収益性が低いこれらの分野を子会社として分離することで給与水準を低く抑え、それ以外のビジネス系システムのエンジニアを相対的に高い給与で確保してきた歴史だったと思います。

他にも企業毎に様々な理由が有ったのだとは思いますが、結果的に殆どの日本のIT企業が自社内に制御系や組込みソフトを扱う部隊を持たない、人材面でも、給与・待遇面でも分断された構造となっています。

組込み系とは、家電品などの内部にICとして最初から保存された形で組み込まれるソフトウエアです。こちらも家電不況の結果、子会社や外部委託として切り出されてきた歴史でした。

今、すぐそこまで来ているIoTやAIが特別なものではなく普通に入り込んでくる社会では、これらの切り出されIT会社内に残っていない分野と、SI会社が保持しているビジネス系のエンジニアの間の技術が重要となっている

工場の生産設備をIoT化しようとすると、生産設備の制御装置とデータ連携することとなり、その制御装置はPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)と言われるコンピュータか、ICに焼き付けられた組込みソフト、NC装置などで制御されています。

今後普及していくと予想される車の自動運転や、IoT家電などを考えると明らかに組込み系、制御系の担う技術部分が増えていくように感じます。

AIの実装も現在はクラウド上に大量のデータを持ち、学習させてクラウド機能として使用する方法が主流ですが、応答速度の面などを考えると、エッジコンピューティングと言われる、より機器に近い場所に組込みソフトとしてAI機能を持つ方向になっていきます。自動車の自動運転機能も自動車自体にICとして実装されていくでしょう。

 

一般企業で抜けている機能

一般の企業に目を移すと、こちらも基本的には情報システム部門と、製造業であれば工場設備・保全部門は完全に分離されている会社が殆どだと思います。前者は基本的にビジネス系のシステムを扱い、後者は生産設備を見てきました。

基本的にはこの企業内の分離されたIT部門と生産設備部門に対応してIT企業側もビジネス系システムを扱うIT会社と制御系を扱う計装会社に分社化してきたのだとも言えると思います。

IoT・AIやRPAなど間を埋める人材・スキルが必要となる

間を埋めるエンジニア

それでは、制御系エンジニアや組込み系エンジニアだけで出来るかと言うと、そう簡単な話ではありません。結局はクラウド環境、インターネットの世界に情報を入れて分析、表示するわけですし、どのような要件がビジネス的に求められるかを把握しているのもビジネス系のエンジニア、コンサルタントなのです。

 

また、これらの分野を切り離してから相当な期間を経ており、分離されていましたから技術的に双方の理解が出来るエンジニアは殆ど育っておらず、融合も結構ハードルが高そうです。

これらの技術領域を総合的に理解し、加えてインターネット経由でビジネス的な応用、効果を求めるわですからビジネスセンスと言うか、ビジネス的に何を目的にし、その効果をどう経営層に訴求していくのか、予算を計上していくのかと言うあたりの知見も必要となり、現在のIT会社には更にハードルは高いと言えるかと思います。

 

システム・業務の間を埋める

現在まで、一般的に導入が進められてきたシステムでカバー出来ている業務(フロー)はごく一部で、自動化が進んでいる企業でもホワイトカラー業務の半分以下ではないかと思われます。

これらの業務システムの間に非効率なホワイトカラー業務があり、主にExcelワークなどの手作業で基幹システムの間を業務的につないでいる状況ではないかと思います。

このシステム・業務的に空いた穴を効率的に埋めるツールとしてRPAやAIが出てきていますが、これらを使いこなす能力・スキルを持った業務ユーザー、エンジニアが完全に不足している状況なのです。

 

 

 

 

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