プロセス工場のIoT化・AI適用にはPLCの理解が必須

プロセス系の工場は各設備が個別のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)で制御されていることが多く、PLCとのシステム連携が必要となります。

しかし、多くのIT会社は歴史的にこれらの制御系FAエンジニアと通常のビジネス系のITエンジニアに会社ごと分離してきた経緯があり、ハードルが高いのが現実です。

この辺りをこちらではご説明しています。

プロセス系製造業とは

製造業は大きく分けて組立系とプロセス系の製造業に分類されます。各製造業の特徴は下記のようなものだと言えます。

プロセス系製造業の特徴

◆ 数ではなく量

プロセス系の製造業とは、簡単に言うと原材料、完成品を1個2個と数えることが出来ず、Kgなどの重さやキロリットルなどの量、何mなどの長さなどの量として扱い、それらの原料配合や化学反応などにより違った性質の製品を生産する製造工程をとる産業です。

例えば、ガラス、石油化学、鉄鋼、非鉄金属などの素材産業や、食品・飲料・製薬などの他、石油、ガス、半導体などもプロセス産業に分類されます。概してその会社が完成品として販売している製品は簡単・単純に見えるものが多いのも特徴ですが、実はこの見た目が簡単そうなものほど製造は難しいことが多く、莫大な設備投資が必要な装置産業であることも特徴となります。

 

◆ ラインスピードが遅い

プロセス系の生産のもう一つの特徴が、組立系の製造ラインほどラインスピードが速くないことです。それは、バッチと言われる1製造単位毎に製造されることが多く、熱や圧力を加える、薬品を加えて化学反応を進める、シリコンインゴットのように結晶を成長させる、菌を培養するなどの工程を想像すると容易に理解できるかと思います。何れも急に進みそうにないものばかりです。

 

◆ PLCで制御される

これらのラインでは、各プロセス装置がPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)またはシーケンサーと言われるリアルタイム処理をする一種のコンピュータで制御されることが殆どです。

これは、リレーシーケンスと言う電気回路を実際に入り切りして制御していた(=完全にリアルタイムです)回路をコンピュータソフトウエアに置き換えたもので、ラダーシーケンスと言われる言語(記述方法)で書かれ、そのスキャン時間が物理的な設備の動きに対して十分無視できるほど早く、保障されています。

これによって疑似的にリアルタイム制御を実現しているわけですが、既に数十年も前からあるものですので、電気・計装・制御系のエンジニアにとっては常識的なことで、今更説明の必要もないものだと思います。

 

プロセス産業のポイント

これらのプロセス系の製造業では、組立系の製造業と違い重点が設計開発よりもその製造プロセス開発、プロセス装置の研究の部分になることが多く、製造する物にもよりますが、大手の場合、装置メーカーと共同研究をし同業他社への販売を制限したりします。

そして、それらのプロセス装置で行う各工程が専用設備であり、互いにネットワーク的に接続されることなく単体機器として動いていることが多くなります。

無論、半導体のファブのように1000億円単位の投資をし、工程間をウエハーの搬送装置、ロボットで繋がっている自動化ラインもありますが、工程別にメーカーが違っていたりと言う理由で以外に状態監視やMESと言われる生産実行指示のシステムまで完全に連携しているところは少ないように思います。

 

ビジネス系エンジニアに制御系システムは無理

しかし、今世間で騒がれているIoT化やAIの活用となると別の話になります。なぜなら、これらはビジネス系のシステムエンジニア、システム会社を中心に研究開発が進められ、盛んに売り込もうとしているものだからです。

 

しかし、歴史的にこれらのSI(システムインテグレータ)は儲からない制御系の技術・組織を別会社に切り出してきました。よって、社内に制御系のエンジニアは基本的にいないのです。

 

プロセス工場へのAI適用の方向性

プロセス系の制御装置(PLC)に話を戻すと、これらのプロセス産業のIoTを進めようとすると、このプロセス装置のコントローラであるPLCに殆どの必要な情報が有りますので、これからデータを取り出す、設定値を書き込むことになります。

ここにIoTやAIを現在進めようとしているソフト会社、システムインテグレータやAIの研究開発型企業にとって大きなハードルがあるのだと思います。

言うまでもなく、PLCをシステム的にソフトウエア的に理解すれば済むというものではなく、その先には物理的に電磁弁があり、流量を制御し、シリンダーを動かしていますし、モータの回転を制御し、設備を動かしています

プロセス系の場合、その製品をどのように製造し、その為には実際の制御端がどのようにコントロールされるべきか、どこの値を見れば何の値が判るのかを理解する必要があります。これは、ビジネス系のエンジニアには実際問題、ハードルが高いのではないでしょうか。

組立系製造業のところでも書きましたが、こちらは恐らくエッジコンピューティングの方向へ進み、搬送設備や産業用ロボット、NC装置など自体、もしくはその近くで人に代わり柔軟に判断する意思決定機能が寄っていくものと思っています。

しかし、プロセス系産業では、特に中小規模の企業が多いこともあり、PLCとの接続によるIoT化とその先のクラウド上にあるAIによる状態監視、予測や最適生産があるのだと思います。そして、先にも書いたように時定数が大きいこともあり、技術的にはこちらのほうが実現に近いように思っています。

組立系製造業とは

プロセス系の製造工場に対して、組立系と言われる製造形態を採る産業も多く存在します。その特徴とAI適用の方向性は以下のようなものになると考えられます。

 

 

 

 

 

関連記事

  1. 工場のIoT化における日本の課題

  2. 全設備を故障予知・予防保全には出来ない

  3. IoT・AI社会に欠落している人材・スキル

  4. AI のビジネス応用が高額になる理由

  5. インダストリー4.0の本当の価値はSCMにある

  6. 本当の問題は旧型PLCのIoT化

カテゴリー

人気の記事