工場での製造形態は大きく組立系とプロセス系にに分類されますが、特に組立工場にAIを適用しようとすると、難題が多く、エッジと言われる現場に近いところに学習済のAI機能を実装することになります。
その辺りをこちらでご説明しています。
組立系製造業とは
製造業は大きく分けて組立系とプロセス系の製造業に分類されます。各製造業の特徴は下記のようなものだと言えます。
組立系製造業の特徴
◆ 製造自体は然程難しくない
よくテレビ報道などで工場のイメージが出るので、皆さんが工場と聞いた時にイメージするのはこちらの製造形態ではないかと思います。
パソコンや車の組み立てラインのように予め別工場や部品メーカーで加工した部品を組み付ける生産ラインが組立ラインになります。
◆ 部品を数えられる
殆どの部品が1個2個と数えられる部品で、グリスなどの間接材料以外の殆どの原材料が最終製品に何個使われたかが明確なものです。
パソコンなどは、今となってはマザーボード、CPU、ハードディスク、メモリーなどを買ってきて組み立てれば小学生でも組立られるように、組立自体は難しくない工程が殆どです。
組立て系産業のポイント
こういった産業でのポイントとなるのは、その部品を含めた設計・開発工程にあることが殆どで、自動車なども設計段階での部品メーカーとのすり合わせ、試作と、その試作テストの全体工程をどこまで短縮できるか、モジュール化して最終組み立てを楽にするかにかかっています。
その意味で、製造ラインはベルトコンベアや、搬送ラインの両側に組立を行う産業用ロボットが並ぶか、ラインオペレータが決められた手順通りに組み付けていく形態となります。
ラインスピードに間に合わない
このような製造方法の工場をIoT化して、AIを適用しようとすると、産業用ロボットや加工装置の制御系システムと接続することになってきます。もしくは組立オペレータの動きを何等かの方法(サンサー、画像など)で取得する方法でしょう。
しかし、自動車メーカーやそこそこの組立系メーカーが使っている産業用ロボットは既にそれらの産業用ロボットメーカーの特殊仕様のネットワークで接続され、状況監視、指示伝達やソフトウエアなどが更新されています。
ここから各ロボットの動き、センサー信号を取り出すのはかなりハードルが高いと言えます。
むしろ、それらの信号をIoT化してインターネット越しに各信号を見ても、そこから人が判断して何かをしたところで、既に車体などの組立対象は組付けが終わり、ラインの遥か先のほうに進んでいる
これらの組立系ラインでは、ラインスピードに対してインターネットの先にあるクラウド、タブレットなどで見て判断していたのでは間に合わないのです。
IoT化・AI適用の方向性
IoT化の方向性
これらの組立系の生産ラインのIoT化としては、もう少し上位の生産計画、実績やラインの稼働状況、ラインイン、ラインアウト数、部品の納入、使用状況や、在庫などのレベルに必然的になるものと思われます。
AIの適用
また、AIの活用をしようにも、ラインスピードに追い付くためには、クラウド上での学習、判断ではなく、エッジコンピューティングと言われる、現場装置自体、もしくはその近くに機械学習機能や学習済みのディープラーニング機能を持ち、現場で意思決定していく方向になるのだと思います。実際、各社のAIやデバイスの基礎研究の対象もその方向に行っています。
話は違いますが、車の自動運転を実現しようとすると、どうしても膨大な並列計算が必要となり、GPUなどの並列計算を得意とするデバイスの研究開発やAIのソフトウエア実装の研究が進められています。これらの研究開発が数年以内には実際に各工場のラインでも使われていくと想定されます。
その先の世界
その時には、先に書いたビジネスに近いレベルの情報をインターネット経由で確認し、ラインの組み換えなどの生産計画や、オペレータのシフト、部品メーカーへの発注や顧客への納期回答など意思決定していくものと思われます。
また、、ライン際では、一定の範囲内で自分で判断して動きを柔軟に変えていける生産加工ロボットが無言で24時間365日動いているのでしょう。
その意味で、日本の人件費の高さを理由に海外移転した多くの組立系工場は国内の消費地に近い立地に回帰するのだと思われます。もはや低い人件費は競争の源泉ではなくなり、需要地立地はむしろ需要を即反映し、物流費を最適化しつつ最終製品在庫を減らせるからです。
その辺りの技術を手放さない限り、日本の製造業の未来は明るいように思われます。(人口減で需要自体が減っていくと言う話はありますが)
プロセス系製造業とは
組立系の製造工場に対して、プロセス系と言われる製造形態を採る産業も多く存在します。その特徴とAI適用の方向性は以下のようなものになると考えられます。