「働き方改革」は様々な要素を含むキーワード(バズワード)として最近使われることが多くなった言葉ですが、ここでは企業が今後取り組みべき内容に関して具体的に考えてみたいと思います。
働き方改革(法)で求められている内容
「働き方改革」の内容は下記のような内容を含み既に国会で成立し、2019年4月1日から順次施行される法律です。これらの詳しい内容に関しては情報が多くありますのでそちらに譲るとして、その項目だけ挙げておきたいと思います。
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- 労働時間に関する制度の見直し
- 勤務間インターバル制度
- 産業医・産業保健機能の強化
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 同一労働同一賃金
- 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
- 行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
各企業内の人事・総務部門や法務などは順次施行される法律に対処していく必要がありますが、それらの法対応は明らかに「労働者保護」特に非正規雇用の待遇改善がメインであり、企業経営の足枷になる方向であることは間違いありません。
労働時間を短くし、同じ作業は同じ賃金 ⇒ 基本的に正規雇用/非正規に関わらず同一時間単価
これは現在の市場において圧倒的なコスト競争力、シェアを持つ企業にといっては良いかも知れませんが、殆どの企業にとって経営にマイナスの影響が大きいと言えます。
企業で働く個人に目をやると、次の様な考えに至る可能性が高いでしょう。
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- 同じ成果を出す人であれば、働く時間は短いほうが良い ⇒ 正社員は不利
非正規雇用であれば柔軟に働く時間を調整出来て、場合によっては社会保険などの人を雇用しているが故に発生している付帯費用も低く抑えられます。正社員には本人がもらっている給料の倍近いコストが発生すると言われますので、結果的に余程の「労働生産性の改善をしなければ従来よりもコスト増になる」のは明らかです。
ホワイトカラーの業務時間には無駄が多い
現在のホワイトカラー(社員)がどの様に時間を使っているか、会社によってバラつきがあるかとは思いますが、次のように言われています。
情報検索・入手に業務時間の3割を使っている
皆さんご自身の日々の業務時間をどの様に使っているか思い返して頂ければ、この数字(業務時間の3割が情報検索・入手の時間)が然程外れていないことは納得出来るかと思います。その時間は1週間で17.8時間にも及んでいるのです。
一昔前(Before Google)までは外部の情報を入手するのは非常に大変でした。一部の社員だけが持つ外部の人的ネットワークを駆使(外部の人間を使って)して、時には費用をかけて情報を収集し上層部にレポートする。
この特技だけで上役から重宝がられ、生き残っていた幹部社員も多かったかも知れません。しかし、現在ではGoogle先生に質問すれば誰でも同じ情報が得られ、得られる情報の鮮度も各段に向上しました。
多少の検索テクニックの優劣は有ったとしても、基本的には小学生でも幹部役員でも同じ情報が瞬時に得られるようになったのですから劇的な進化です。
「働き方改革」で業務自動化は着実に進んでいる
「働き方改革」でホワイトカラー、特に正社員の労働生産性改善が求められるようになると言う点はご説明しましたが、PCに向かて繰り返し行う様な単純事務作業の自動化は着実に進んでいます。
AIの導入はまだ先だろう、と考えている様な人の仕事ほど、AIの前にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって自動化されようとしています。あなたの会社が未だRPAに着手していないのであれば、既に生産性改革で後れをとっている可能性が高いと考えるべきでしょう。
最も価値のある情報は個人のPCに埋もれている
情報を作成した時点で整理・保存するような行為は本人にとって非常に手間なのです。特に有益な情報の作成者にとってそれは無駄な作業以外の何物でもありません。余程の自己顕示欲が強い社員以外は、自分が作成した(自分は理解している)情報をあえて手間をかけて整理し、共有するインセンティブが無いと考えられます。
結果的に重要な(有益な)情報ほど、個人PCのディスクに保存されたままになってしまうでしょう。情報は鮮度が命という点もあり、簡単に情報を共有出来て誰もが検索して参照・再利用出来るよにする必要があります。
課題は企業内情報の検索
それでは、業務時間の3割もの時間を使って検索・入手する必要がある情報とは何でしょうか? 残るは明らかに社内の情報なのです。ここは従来から課題認識があるにも関わらず、あまり改善が進んでいない手ごわい部分だったのです。
◆ 整理されていない、整理出来ない
情報システム部門などを中心にして、「社内ポータルの構築」や「SharePointを使った文書管理」等の社内プロジェクトを立ち上げるケースが多くあります。そのプロジェクト活動時点では最新の情報を整理・分類して一定の成果とされます。
しかし、完成した瞬間から陳腐化が始まり、常に発生する新しい属性の情報の格納場所がない状態が発生し、まだ新しい箱を作成する気概のある社員であれば良いのですが、大半の社員は適切な整理場所がない時点で諦めてしまいます。
こうして、本当に重要な(最新)情報は共有されないままとなるか、その他(全て)の大箱に入れられてしまい、本当に必要な共有すべき情報はなく社内規定・ルールや誰かの個人的な趣味を披露するコミュニケーション活性化(?)の手段程度となってしまいます。
常に発生し続け、それもビジネス環境の変化に応じて従来の整理の枠組みに入らない情報程重要なのですから、整理すること自体が無理と考えるべきでしょう。その様な労力を割くのではなく、情報は必要な時に必要な人が探し出せる状態になっていれば良いはずです。
◆ どの情報が最新か判らない
ファイルサーバーにファイルとして保管していく様な対応では、情報の作成者は内容が判っているため何気なく(あまり考えずに)適当なフォルダに保存します。それも、日付やバージョンなどを変えながら頻繁に作成・保存されることになります。
そうしている内に少し違った内容が付け加わり、ファイル名自体を変更したくなり全く別の内容に見える別のファイルが増えていくこととなってしまいます。しかし、これらのファイルの内容はほぼ重複しているのです。
この様な事が繰り返された結果、同じような内容の別名ファイルの複数派生バージョンが多数発生してしまいます。まだ頻繁に更新している内は良いのですが、少し時間が経つともう本人もどれが最新なのか判らない状態となってしまいます。
◆ 探せない
最大の問題は必要な情報を必要な社員が必要な時に探し出せない点です。SharePointなどのドキュメント管理に情報が完全に入ってさえいればまだ全文検索機能と言われるファイル名だけではなく、その中身もで検索対象とする機能で探し出すことが可能なのですが、先の通り重要(有益)な情報ほど保管されない傾向があります。
結果的に整理プロジェクトを実施した時点の古い(ゴミ)情報しか入っていない、誰も見ないものとなっていってしまいます。
今後は、エンタープライズ・サーチ(企業内検索)が焦点に
これまでご紹介してきた通り、「働き方改革」の結果ホワイトカラー労働生産性の改善が待ったなしの状況で、尚且つ、PC事務作業の自動化はRPAによって既にかなり進展しています。結果的に今最も焦点があてられつつあるのが、3割の時間を使っていると言われる情報検索・収集の部分となっているのです。
エンタープライズ・サーチとは
エンタープライズ・サーチとは、正に今求められている社内の情報を検索・収取する為のいわば「社内Googleエンジン」のようなものです。WindowsのExploreで検索できるじゃないか、と考えられるかと思いますが、似て非なるもので次のような特徴(利点)を持っています。
- ExcelやWord、PowerPointなどのオフィスファイルからCADファイルなど多くのファイルの内容(ファイル名ではなく)を全て検索対象に出来る
- Googleと同じ仕組みで、夜間にインデックス(見出し・索引)を作成し即座に検索結果を出せる
- ファイルサーバー、データベース、ローカルファイルなど社内ネットワーク上の全てを対象に(設定)出来る
- 社内ネットワークの参照権限(AD認証)を基にした社員一人一人の情報アクセス権限を管理できる
社内の情報を素早く探し出し、共有、再利用出来るようにした企業が競争優位に
スマートフォンで日常から最新の情報を手に出来る状態にある私たちにとって、この点に疑問や異論を唱える人は殆どいないのではないかと思います。今となっては、インターネットやスマートフォンがここまで普及していなかった10年ほど前にどの様な生活をしてたのかさえ思い出されない感じかも知れません。
現代において、「情報 ≒ 価値」そのもの
であり、その価値を本来は日々大量に生み出し、蓄えているはずの社内が最も情報検索・収集の面で後れているのですから、ここにいち早く取り組む事は最優先事項と言えるかと思います。
人によって必要な情報が異なる
社内でも、部署や職位、担当業務やその時々の業務内容などに応じて、必要な情報は変わってきます。あらゆる場合・人を想定してタグなどのキーワードを付加したり、整理することが不可能なことは明らかです。
欲を言えば、検索の様にプル型の機能だけではなく、プッシュ型で最新情報を提供・配信する機能があると良いかも知れません。特に忙しい役員さん等は、自ら検索するのではなく複数の気になるキーワードを設定しておけば、朝などにそのキーワードで検索した最新の情報がメールなどで届き、出勤途中などに見れるような状態です。
定期的にキーワードを見直すか、AIの機能などを付加してその役員さんが実際に見た情報(に含まれる情報)の重みが加点されていき、次第にその方の必要としている情報に集約・濃縮(パーソナライズ)されていく様な機能が役にたつかも知れません。