見積り業務は売上に直結する非常に重要な業務にもかかわらず軽視され、社員がエクセル計算式やマクロで手作りしたツールが代々引き継がれているような会社が多いかと思います。製品(部品・オプション)の組み合わせや、その制約、価格テーブル・値引きなど、複雑な製品・サービスの見積りを毎回行うような企業の場合、既にExcel見積りではメンテナンス不能に陥っている会社を多く見かけます。
CRMやERPシステムにも簡単な見積り機能が付属していますが、あくまで単価に数量を掛け合わせる程度の単純なもので、とても実用にはならないと思いますので、ここではその辺りをご説明しています。
CRM/ERPの目的と管理する情報
先ずは、そもそもCRMやERPが何(の情報を管理する)を目的としたシステムであるかを簡単に整理しておきたいと思います。
CRMとは
CRMとは、SFA(Sales Force Automation:営業案件管理)を中心とした顧客接点(マーケティング、営業、サービスなど)の全体を通して管理することで顧客ライフサイクルを全体で売上を上げていこうと言う考え方・目的のシステムです。
見積りも当然顧客接点のうちの1つではありますが、あくまで顧客接点を管理していく事に主眼を置いているため、CRMが持っている見積り機能は単純なもので、実用的なレベルの複雑さはありません。
また、先でご説明しますが見積りそのものが一定の期間を持った業務プロセスであり、CRMが管理するリード・営業案件と並行して進められるものです。
ERPとは
対してERPは基本的に会計システムですので、過去に発生した事実を正確に会計仕訳していくシステムです。従って、一度仕訳を入力すると間違ったからと言って変更は出来ず、反対仕訳を記帳する事で金額的に無かったことにします。
過去は変えられないので、情報系のシステムのように簡単にデータを削除したり修正したり出来ないような作りになっていますので、営業、そしてその一部のプロセスである見積り業務のように将来に向けた仕事には極めて不向きです。
詳しくはこちらをご確認下さい。 ⇒
なぜCRMやERPの見積りは使えないのか
実業務の見積り作成はあまりに複雑
見積りを作成するのが営業なのか、営業部門の内勤・営業事務なのか、会社によって様々だとは思いますが、実際の見積り業務は実に複雑なことが多いと思います。
しかも、それは次第に複雑化していく事が通常であって、改めてプロジェクトを組んで見積り(価格設定)ロジックを整理しない限り、まずシンプルになる事はないのです。
理由は様々ですが、その多くは、見積り(価格設定)業務が会社の売上(利益)に直結し、市場環境、経営状況、経営の意思などが複雑に絡むため様々な思惑や販売戦略・施策などが複雑に絡むからです。
- 期間限定の価格プロモーション
- 競合製品への対応としての価格・商品戦略
- 前月の販売・売上実勢をカバーするための特別プロモーション
スピードと正確性・正当性が同時に要求される
◆ 見積りにはスピードが要求される
見積り業務にスピードが要求されるのはご理解頂けるかと思います。それは見込み客の購入検討段階において、
顧客の持ち時間 > 自社の持ち時間
が常に要求され、売上に直結するからです。
◆ 見積りには正確性が要求される
これも容易に理解できるのではないかと思います。仮に”0”が1つ少ない金額で顧客に見積りを出してしまったら、その訂正は大変です。通常、日本では見積りには会社の角印を押して出しますので、会社として正式にこの金額で販売する事を約束したものです。
◆ 見積りには正当性が要求される
正当性と言っているのは、上記の印鑑もそうですが、社内的には社内で正当化された見積り価格決定テーブル(ロジック)で計算され、通常は原価と、その取引単体での粗利額(率)も同時に計算します。
そして、社内的な承認フローを経て社判が押印された会社として対外的に正式な見積り書となります。
1度見積もって終わりにならない
金額や販売している製品・サービス、顧客(業界)にもよるとは思いますが、見積りは顧客折衝の中で何度も出し直しが発生します。それは、値引きであったり、納期・納入場所の調整、支払い条件など様々な理由で、実際の受注に至るまでに複数回の見積り版改訂を経るのです。
従て、見積りツールとしてもこの行ったり来たりのプロセスを何回も繰り返す必要があり、Excel計算式+マクロのようなツールでは不整合、データ消失などの原因となります。
見積り業務はCRMとERPの間にスッポリと抜けたプロセス
見積り業務はCRMとERPが受け持つ業務プロセスの間、もしくはCRM(SFA)と平行した業務です。そして、
見積りは、それ自体が何度も修正を繰り返しながら行う業務プロセス
です。
- 金額や取引条件を変更しながら複数回繰り返す(期間を持つ)
- 価格決定にはロジックに加え、経営や営業部門の意思が入る
- 通常は社内承認フローが入る
見積りプロセスを管理するツールが必要になる
多くの企業では、これまで投資判断に「人件費などの削減効果」を基準にROIとして判断されてきました。結果的に売上を上げる(売り逃しを避ける)、もしくは価格・利益試算精度を向上する、などの費用対効果では測り難いが、見積り業務のように会社として売上に直結する非常に重要な業務に対しては投資決定がされ難かったようです。
その業務を行ている人数が少ない(≒ 合理化効果金額としては少ない)のですから当然そうなるのですが、考えてみると仮に下記のような状況が常態化しているとすれば早急な投資決定が必要なのだと思います。
- 多くの企業の営業(事務)が見積りエクセルと長時間格闘している
- 受注・出荷条件や製品仕様などの細かな調整が技術との間で発生する
- 期間限定、製品・サービス限定など、頻繁な単価、値引き条件などの見直しが発生する
- 見積りExcelが頻繁に不整合を起こしたり、クラッシュしたりする
- 見積りExcelが既にロジック修正などのメンテナンス不能な状態