複雑な見積りシステムが売り逃しにつながる

世の中には単純に販売単価に個数を掛ければ金額が出せる、と言うように見積りを出せない製品・サービスを扱う企業が多くあります。BtoB(法人客相手)のビジネスに多いのですが、基本的な単価はあるものの、毎回一品料理として積算・見積りして顧客に提示するような製品・サービスです。

この様な製品・サービスを扱う企業が顧客に提示する見積書の作成を大企業であってもExcelで担当者が手作りした様なツールを使い続けている会社を多く見かけます。

実に危険なことであり、売り逃しにつながっていると言うことを認識すべきです。そして、タイムリー・ロジカルに誰が見ても明確なロジックに基づく見積りを出せるように早急に改善すべきです。

時間がかかる見積りは売り逃しにつながる

実際に営業に関わっている方は実感されているかと思いますが、BtoBビジネスにおいて殆どの顧客(恐らくBtoCでも高額商品の場合)はこう考えています。

あなたの製品、サービスを購入するまでの比較、検討に使う時間(自分の時間)は長く欲しい

従って、「見積りを依頼したら直ぐに欲しい」と顧客は考えます。(相手の検討期間は自分にとっては無駄、無いほうが良い)

これは、BtoB、すなはち組織として運営されている企業が何かを購入する場合、論理が必要になるからなのです。(対して個人はその場の感情で購入し、論理で正当化します)

そして、自社内で十分な時間を使って論理的な比較・検討をし、社内での承認稟議を経て初めて発注となります。(予算が予めあればの話ですが)年度や半期で予算がとられていなければ、通常の会社は予算取りして実際の発注は翌期になることが多いのだと思います。

要は、「自社の時間はより長く、相手の時間は短いほど良い」、結果はすぐに欲しい

と考えています。「あなたの会社の社内事情など気にしていない」のですから、それに対応して柔軟に、早く見積りを提示出来た企業が有利になるのは言うまでもありません。

そして、顧客は発注したからには直ぐに欲しいのです。

 

なぜ見積りは複雑に難しくなっていくのか

見積りが複雑になる理由は実に多い

それではなぜ多くの企業で見積りに長時間がかかってしまうのか、一言で言うと、「顧客への見積り提示には様々な思惑、制約が絡むから」です。

  • 相手企業によっては必ず値下げ交渉が入る(からその分を上乗せしておく)
  • 「あいみつ」のため、競合他社の入札価格が気になる
  • 顧客の予算を聞き出したい
  • 少しでも安く見せたい(その為に端数を切り捨てる)
  • 購買部門で一律〇%値引かされることが判っている
  • 先月の売上が悪かったため、急に特別値引きキャンペーンを行うことになった

結果的に見積り項目や単価テーブル、値引き条件などのパターンが増殖を続け複雑怪奇なエクセルの見積りテンプレートが出来上がる

 

意図的に減らさな限り、見積りパターン・ロジックは増え続ける

見積りに関して、(例え一時的と決めていても)一旦追加された特別ロジックが減ることはまずありません。意図的に見積り(価格決定)ロジックを整理・見直す活動を行わない限り、それは増殖を続けます。

単価テーブル・値引きなどを決定する場合、社内稟議など多くの労力を要しますが、見積りロジックを減らすのは更に多くの労力を必要とする場合が殆どです。

そして、それを行う短期的なインセンティブが殆どないのです。「売れないので値引きを入れたい」これは、営業部門としては売り易くなることであり、頑張って社内を説得して話を通そうとします。

しかし、今ある価格決定ロジックをシンプルにしようとすると、周辺の商品・サービスを含めた価格全体に影響を及ぼす可能性が高く、通常は単純にそのロジックをなくす訳にはいきません。

営業部門にとっては半ば既得権益化していますので、その結果売上に影響したりしないのか、だれが責任を取るのか、など、様々な思惑が入り乱れ、価格決定ロジックをシンプルに見直す為の多大な労力を割く時間もリーダーシップを発揮するメリットも殆どないと考えるのが通常です。

こうして見積りロジックは肥大化し、

ツギハギだらけの計算式・マクロの固まりとなった見積りエクセルが巨大化していきます

 

見積りExcel(エクセル)は実に厄介

大企業であっても見積りツールをエクセルで作成していまだに使い続けている会社は多いかと思います。皆さんExcel見積りツールに関してこの様な経験はないでしょうか?

  • 営業マンが必ず帰社し、古くからいる営業事務の方に頼まないと見積り出来ない(数日を要する)
  • 配布すると必ず計算式を壊して返してくる人がいる
  • よく解らないテーブルやロジックで巨大化したExcelファイルをメール添付で送っている
  • ネットワーク共有していたExcelファイルを複数人が同時に更新し、情報が失われる
  • 時々クラッシュして業務が滞る大変な自体が発生する
  • 古いExcelシート(ロジック)のまま承認申請してくる人がいる
  • 過去から脈々と受け継いできた見積りExcelのロジックを誰も知らない、説明できない、改修出来ない
  • 見積りExcelを直そうとすると、外部業者に依頼する必要があり、ブラックボックス化している(柔軟性、スピード間が著しく低い)

Excelで複雑な見積りツールを運用するのは危険で、売上に直結する程の経営課題

見積りに必要な要素・項目

顧客にとって必要な見積り要素

  • 含まれるもの、数量、仕様など、欲しいもの・サービスであるか
  • 価格(税抜/税込、支払い条件)
  • 納期
  • 保障内容

自社にとって必要な見積り要素

  • 見積り前提条件(見積りに含まれる範囲、数量、納期、納品場所など)
  • 見積り有効期限、見積り番号(版数)
  • 法的なチェック
  • 支払い条件(支払いサイト、税計算、請求・振込み/自動引落/カード/手形などの決済手段)
  • 社内での正当性(社内承認、稟議)
  • 金額算出ロジック
    • 単価・値引きなどのテーブル
    • セット販売オプションなど
    • 制約事項(あるオプションを選択したら同時にこちらは選択できない、など)
    • スケール(単純に単価に数量を掛けるのではなく、数が増えていく程単価が下がる、など)
    • 原価積み上げ、利益率の見積り

など、実は見積りツール・テンプレートに必要な項目・要素は自社としてのほうが遥かに多く、時間がかかるのも無理はないのです。

 

見積りは時間軸を持ったプロセス

「見積り作成」と言うと、単純に「見積り書を作成する」行為、もしくはその時点での単発作業のように思えますが、実は時間軸上も

見積り業務は、社内の多くのプロセスが絡む一定の期間を持ったプロセス

なのです。

この売上に直結する非常に重要な業務プロセスである見積り業務がこれまで殆ど議論されることなく、システム化から取り残され業務担当が内職したようなExcelツールで行われているのです。

また、見積り作成自体も通常は下のようなタスクを複数回繰り返しながら調整していく複雑な一連のプロセスとなっています。この繰り返し(プロセスを戻る)があったり、顧客折衝の結果を反映しながら版数を重ね、その度に技術部門との調整・検証を繰り返す必要が生じたりします。

このいきつ戻りつの見積りプロセスにも、Excelマクロによるテンプレートの無理がある

Excelマクロでは単価マスターや荷引きテーブルなどを一方通行で反映させる事は出来るのですが、行先で一部値を修正してそれを元のテーブルに戻すなどの、インタラクティブな双方向プロセスには向きません

 

必ず反映出来なかったり、不整合が発生します。全体に対して行った金額修正を明細レベルに割り戻したり、そこに消費税を掛けて1円以下の端数を切り捨てたり、というプロセスを繰り返すのですからほぼExcelマクロでは不可能だと言えます。

これと似たような業務が予算(計画)策定です。この業務も会社の将来を決定する非常に重要な業務にも関わらず、システム化から取り残され巨大Excelマクロの塊になっている会社が多いと思います。(この様な業務へのシステム投資はそこに何人の工数が掛かっているかと言うコスト削減の視点で判断してはいけません)

 

売り逃さない見積りツールに必要なポイント

  1. 柔軟性
    • 柔軟にロジック、テーブルなどを業務ユーザーが変更可能にしておく
  2. 高速化
    • 自動化できるところは自動化する
    • 様式(テンプレート)を統一する
    • 営業マンが営業現場(客先)でデータ入力すれば見積りがその場で作成できるスピード感
  3. 可視性
    • パターン(ロジック)を整理し、シンプルにする
    • 見積りロジックの可視化(説明できることは非常に重要)

上記のようなポイントを押さえた見積りツールを準備されるのが、少なくとも「売り逃しを減らす」ことになり、ロジックを明確化することで売上・利益計画の見通しがつくようにする事に繋がると考えられます。

 

 

 

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