RPAやAIの導入によるオフィスの自動化が進んでいます。働き方改革の流れが変えられない以上、それらに仕事を奪われない為の戦略を練る必要があります。敵を知り、RPAやAIに出来ない仕事をしていく、これらを使いこなしていく方向のほうがむしろ有利に、楽に働く方法なのです。
AIの時代はすぐそこまで来ている
最近、AIやRPAなどを業務に適用して業務の効率化を推進するお手伝いをしていて、つくづく思う事があります。それは、マネージメント層はAIなどの導入に結構前向きで推進しようとするのですが、現場で実際に作業している方々が乗り気でないことが多いのです。
AIや、特にRPAを導入して単純事務作業を自動化しようとすると、どうしても実際に作業している方の作業を調べて整理し、どの様に自動化していくかを考える必要が出てきます。協力が必要なのです。
恐らく、ホワイトカラーであっても実業務としては日々、もしくは週次・月次などで単純作業を繰り返している人が多いのだと思います。それらの人達は今自分のやっている作業をAIに奪われるのではないか、と戦々恐々としているのだと思います。
気持ちは解りますが、もうAIの時代はすぐそこまで来ていて、避けられないのです。それであれば、むしろ、考え方を変えて、AIやRPAと共存し、使いこなして楽に仕事を終えられるようにしていく方法を考えるほうが現実的と思われます。
敵を知り己を知る
皆さんよくご存知だと思いますが、孫子の古事に次のような言葉があります。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
敵のことをよく知り味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはない、ということですが、RPAやAIに関しても、それに仕事を奪われるのではないかと恐れ避けているのではなく、敵をよく知ることが勝利に繋がるのではないかと思います。
当然、AIやRPAなどが全てを出来るわけではありませんので、それらが出来ること、向いている仕事を知り、AIやRPA等が出来ない仕事を自分がやっていけばいいのです。
AI・RPAに出来ない仕事とは
それでは、AIやRPAなどの最新技術で出来ない仕事とは何でしょうか? 単純な作業、論理・因果が明確である作業や推論的なものはコンピュータで実装されたAIのほうが得意なのは明らかですので、一般化すると次のような事だと思います。
C:クリエイティビティ―
これは当然ですが、新しい発想をすることは今のところコンピュータは苦手です。決められた手順通りに計算して結果を出すだけですので、そこには新しい発想は生まれません。
少なくとも、現時点で私の知る限り当分これをコンピュータに実装されたAIやRPAなどが出来るようになることはないでしょう。
今話題になっているディープラーニングは、大量のデータに共通する特徴を見つけ出して分類したりする事は得意です。そして同じ特徴(例えばゴッホと同じタッチの絵を書いたり)を持ったデータを抽出したり、加えたりすることは出来ます。
しかし、それはクリエイティブとは言わないと思います。多分コンピュータが書いた小説や絵、音楽を聞いたり、見たりしても人は感動しないでしょう。
M:マネージメント
マネージメントは人の管理であったり、経営に関することだったりと様々ですし、相手が人間である以上、単純に論理で割り切れるものではありません。
人には感情があり、論理だけで動くわけではないからです。経営戦略にしてもマーケティング調査などに基づき、戦略ロジック・ビジネスモデルを構築するわけですが、100%論理的に説明できることは有りません。
むしろ、論理はせいぜい20%程度のもので、残りは「経営者の野生の感」で経営判断をしているのだ、と一橋経営大学院の楠木先生も言われていました。
完全に人間くさい世界であり、決してマネージメントが機械に置き換わることはないでしょう。
H:ホスピタリティー
そして、ホスピタリティーですが、言うまでもなく、「思いやり」「心からのおもてなし」という意味ですので、これこそ人間の仕事でしょう。
作業として、介護や給仕などをするロボットの実現は従分可能ですし、既にある程度実現されています。
しかし、そこに全く人が関与しないことは有り得なく、体力が必要だったり、夜間見回りだったり、サービス提供者側がより人間的な部分に専念できるようにする為にあるのだと思います。
最終的には敵を使いこなすこと
そして、RPAやAIに絶対に仕事を奪われないようにする最も有利な方法があります。それは、これらのRPAやAIを使う側に早期になる事です。
RPAはロボティック・プロセス・オートメーションの略ですが、どちらかと言えばロボットと言うよりはマクロです。もしくは英語ではデジタル・レイバーと言われていますが、PCで行う単純作業を自動化する手段です。
当然万能ではありませんし、ご存知の通りExcelのマクロにしても同じ条件で無ければ、直ぐに動かなくなってしまいますので、管理者が必要なのです。
RPAを推進する業界などの専門家はデジタル・レイバー(=RPA)を派遣社員のように管理する組織・管理者を置くことを推奨しています。
現場で実際にその作業をしていた方が自分の作業の内、自動化可能な作業をRPAに置換える事で毎日残業していた1時間、2時間をやらなくても済むのです。
そして、それらの単純PC事務作業の管理者として、デジタル・レイバーを使いこなしていく管理者になるのです。RPAやAIなどに限らず、ホワイトカラーの生産性改善の流れは恐らく変えられません。
しかし、デジタル・レイバーに働かせて自分は楽になったとしても生み出す付加価値が同じか、増えていれば給料が下がる理由はなく、むしろ上げる余地が増えてくるのだと思います。