現在の会社の中で購買部門の位置付けは微妙です。単に需要部門からの購買依頼をベンダーに発注する事務処理だけであれば殆どシステムが自動的にできてしまいます。購買部門は会社の中で単なる原価センターではなく、より企業の競争力を強化する戦略部門として明確に位置付けていく必要があります。
購買部門の位置づけ
現在は購買部門が単なる需要部門からの購買・調達依頼を事務的にベンダーに発注し、支払いする原価センターになっている会社が多いかと思います。やっていたとしても、調達品・内容に関わらず一律5%値切るなど、言い方は悪いですが頭を使わない業務をやっている程度に思えます。
この一律値切りはベンダー側も一連のプロセスとして理解していて、最初から5%乗せた金額で見積りを出します。この5%で低廉化した金額が購買部門の社員の評価になっていたりして、
ベンダー側との暗黙の了解・お約束になってしまっている企業も多い
私の知る限り、間接部門の中でもこの様な経費を使うだけの購買部門に優秀な社員が配属されることは稀で、どちらかと言えば会社のお金を使っているにも拘わらずビジネスパートナーとしての意識も低く、業者に対する高圧的な態度で接するイメージです。
本来は製造に使用する直接材の調達にも関わり、品質や原価を左右する直接部門であるべきだと思いますが、これらの直接材は個々の現場で調達しているケースが殆どかと思います。
殆どの調達品がコモディティー化する
以前からある Ariba などのマーケットプレース的なソフト・システムを使ってもっとダイナミックに世界中から最も品質が良く、安価に調達してくる流れになっていくのだと思っていましたが、なかなかそうはならないようです。
しかし、特殊な技術やパテントなどで守られた一部の品目以外の殆どの調達品がコモディティー化していくのは避けられません。自動車がそうですが、これまで完成車メーカーのコアコンピタンスは内燃機関であるエンジンにあり、この内燃機関の効率が車全体の価値を決定的するため、内製してきました。
それがテスラに代表される電気自動車の時代になろうとしています。電気自動車になったとたん、部品点数は数分の一になると言われており、足回りやモーター、電池など殆どの部品が外部調達になり、完成車メーカーの差別化要素はブランドやデザイン等だけになってしまいそうです。
現在、既に家電や電子機器がそうですが、どこのメーカーのブランドで販売していても結局は同じ部品で、同じ台湾や中国のEMS工場で組み立てている状況となるでしょう。自動車の場合物流が絡むため、消費地に近いところで組立るかも知れませんが、どこの資本の会社がその組立を受け持つのかは判りません。
今後、購買部門は企業の競争力を左右する戦略部門になる
そうなれば、ブランド・デザインなどでの差別化が出来ないメーカーは販売面での優位性が無いのですから、価格勝負となっていくのでしょう。その場合に製造メーカーとして生き残っていくにはやはりない内部原価、特に人件費と調達コストを切り詰めていく話になりがちです。
ベンダー・品目はデータに基づき科学的に評価する
調達先ベンダーを品質、納期、価格など多くの項目で評価していくのが購買部門の仕事である、との考え方は以前からあります。今後は、そこを実際のデータに基づき科学的に下記のような項目を評価していくことを更に進める必要があると思います。
- 不良品の発生率
- 納期遵守率
- 製造(納入)キャパ
- 調達(納入)リードタイム、調達ロットサイズ
- 価格
仕様をベンダーと協議して購買する戦略的調達品にフォーカスする
調達品目にはカタログなどで仕様が決まった一般購買品と、単発で仕様を需要部門が作成して内容をベンダー側と調整する必要がある仕様ものがあります。前者は既に仕様や単価が決まっているものですから後は値引きなどの価格だけになってしまいますので、購買・調達部門は後者にフォーカスし仕様の調整にも関与していくべきだと私は思っています。
仕様の共通化は調達部門にも責任がある
よくあるのが、同じような仕様の部品を毎回新たに設計し、部品メーカーに特注で発注するケースです。既に同じような部品があり、若干の違いはあるのでしょうけど、そこの仕様を統一して共通部品化、モジュール化していくことで部品の品目数が減ります。
これによって様々なメリットを享受出来るのだと思います。
- 発注数量が多くなることで単価を抑えられる
- 共通部品化することで部品在庫の欠品や死蔵品化するリスクを抑えられる
- 設計の共通化
- 品質が安定する
コモディティー化した調達品はグローバルに調達する
最近増えているクラウド購買システムなどを使うことで、コモディティー化した調達品はグローバルにネット調達します。文房具・事務用品など常に循環購買している品目はベンダーがカタログを乗せてくれますので、社員が自分でその中から数量、原価センター、納入先などを入力することで自分で購買できます。
複雑な組み合わせやコンフィグレーションが必要なコンピュータなどであっても、様々な制約やパーツの組み合わせを決定できるツールを提供することで社員自身が調達を行えるようにすることが可能です。それも同じ仕様であれば自社に最も有利な条件で世界中から調達できるようになるのです。
そして、購買部門は、直接材や仕様調整を必要な調達などの業務を集中することで企業としての競争優位性を維持、強化していくことが可能となるのです。