物流費の占める割合は扱う商品によって異なる
物流費の占める割合は扱っている商品によって大きく違いますが、特に一般消費財や素材産業では大きな割合を占めます。それは、自社商品の価格に対して、体積、重量が大きなものが多いからです。
例えば、食品などはそもそも鮮度が重要だったりしますので、冷凍、冷蔵倉庫や配送車が必要になったり、物流費が安くても遠くの工場から運ぶようなことが現実的でなかったりもします。紙パルプ、鉄鋼や非鉄金属、ガラスなどの素材産業の多くは価格の割に重量、体積が嵩みがちな商品です。
一方、半導体チップや、高価な医薬品などは航空便で輸送したりします。時間と共に減価する割合が大きいため、タイムリーに供給することが重要になるからです。また、極端な話をすれば、ダイヤモンドなどは重量・体積に対して価格が非常に高いので、飛行機で手持ち輸送しても割に合う商品です。
この様に、扱う商品によって、物流費のしめる割合は違ってきますが、特にそのウエイトが大きな産業にとってIoTは、今後検討に値する非常に大きなコストメリットがある領域だと思います。
供給計画を最適化するには需要連鎖と在庫の可視化が必要
今、食品・飲料などのように物流費が大きなウエイトを占める産業を考えることにします。供給計画(物流)をコスト最適化したい訳ですから、物流ルートや積載効率、荷役費用、倉庫費用、など個別の費用を収集して、となりがちです。
しかし、物流費全体を最適化しようとすると、先ず、需要連鎖がきちんと出来ている必要があります。逆説的ではありますが、需要予測が出来て、初めて商品が出る最終出荷ポイントに何時、いくつ在庫が必要かを把握できます。
そして、その出荷ポイントに最小の物流費で運べる最適ルートを計画することになります。需要計画と供給計画は分けて考えられるものではなく、表裏一体のものだと考えたほうが良いかと思います。
システム的な計算の順番としても、最終出荷ポイントの需要から上流(サプライヤー側)に向けて運ぶべき数量を、ロットまとめなどを入れながら計算し、次に上流(サプライヤー)から下流(顧客)側へスケジューリングしていく動きをします。
この時に、各拠点に在庫があるのであれば、それも加味しますので、各在庫拠点の在庫がリアルタイムに把握できる仕組みが必要となってきます。
この点でも、個別倉庫や代理店などのシステムとIoT連携することで在庫数量をリアルタイムに把握できる仕組みを構築可能となっていいます。
従来から、取引関係により、自社が影響力を発揮できる在庫拠点では比較的容易に在庫を把握出来ていたと思いますが、数量が少なく、相手方にとって取引ウエイトが低い代理店、デポ(預け在庫拠点)などであっても、IoT技術の発展により、従来より容易に、安価に実現できるようにもなってきています。
ようやく可能となってきたコスト基準の最適供給計画
現在存在する殆どのSCM(サプライチェーン)計画ツールは、あらかじめ設定しておいた物流ルート(複数のルートが可能)から、供給割合に基づいて、もしくは在庫偏在の視点で物流ルートを選択し、供給計画を立案します。
一部の特殊な例を除き、物流コストを最小にする計画を出せるものではありません。出せたとしても、最適化と呼んでいるSCMパッケージソフトの殆どはあくまでルールベースであったり、出した結果を人が見て説明するのが非常に困難なものなのです。
それが、IoTが今後進展すると下記のような様々な点で本当の意味での物流費基準の最適供給・物流が可能となってきます。
- 配送ルート、物流ルートを地図情報に基づき、時間ベース、費用ベースで最適計画・随時変更出来るようになる
- 需要の変動や、交通渋滞、天候など多くの情報に基づき、柔軟にルート・配送の計画を変更できるようになる
- 物流拠点間などは荷物の積み下ろし、現在地などまで把握できるようになる
- 荷役費用や保管倉庫費用、輸出入手続き、税関など多くの費用を総合して最適な物流を計画出来るようになる
- 自動計画立案の結果、人手で実施している物流指示を、AI機械学習により、自動化、最適化出来るようになる
そして、サプライチェーンの最適化を考えた時に必ず行きつくのが、計画サイクルの短縮、随時計画変更です。これも従来は計画サイクルの間に人手による計画の確認、意思入れなどが入っていたため、週単位(バケット)が通常でした。
しかし、人が間に入る必要がなくなれば、IoT連携で情報がリアルタイムに入ってきて、AI機能などによって随時計画が見直されていく世界が実現出来そうです。