AWSクラウドは日本の一般企業には向かない

ひと昔前までは、金融業や政府関連機関など極めて慎重姿勢だったセクターでも、最近はパブリッククラウドを使うことに抵抗がない企業・団体が増えてきているように感じます。そのようなクラウドを取り巻く環境の中、その選び方がどうも間違っていると最近感じています。

現在のクラウドの使い方は初期段階

クラウドの使い方は大きく下記のように分類されます。

IaaS(Infrastructure as a Service)

優位な立場を利用して安く大量に購入してきたハードウエアの上でVM(virtual machine)と言われる仮想化ソフトウエアを動かし、その能力を切り売りしている状態です。基本的にはVMを起動している間課金され、サーバーを購入せずに必要な時間帯だけサーバーを借りている状態です。

ユーザー企業はこのVMの上にOS(オペレーティング・システム)、アプリケーションソフトを独自にインストールしてサーバーとして使用します。

現在のクラウドの使い方の多くがこの使い方と思われ、アマゾンのAWSがトップベンダーとなっています。

 

PaaS(Platform as a Service)

ハードウエアの上にホストOSとその上で直接動作する機能部品が数多く提供され、ユーザーはそれらの機能部品を組み合わせて使います。

プログラムを乗せることも可能で、AIやIoT、大規模なデータ分析の基盤となるHadoopなど様々な機能部品が既にリリースされ、急激にその数が増え、充実してきています。

IaaSのようにホストOSの上にVM+クライアントOS、アプリケーションと多重構造になっていないために非常にコンピュータの能力を有効に使う事が出来ます。

請求も、サーバーを買ったのと同様にVMを動かしている間課金されるIaaSと違い、その機能が動いている間のみの従量課金となっています。

 

SaaS(Software as a Service)

予め業務に使えるソフトウエアがインストールされた状態でサービスが提供され、そのアプリケーションを使うユーザーID単位で契約して使う形態です。

セールス・フォース・ドットコムが有名ですが、最近はドイツSAPのERPなど様々なアプリケーションがこの形態でサービスとして提供されています。

他にもプライベートクラウド、パブリッククラウドなどと分ける分類もありますが、何れにしても現在のクラウド環境の利用状況は、上記のIaaSとしての使い方が殆どで、レンタルサーバーに近い、ごく初期段階だと考えられます。

ネットワークの先にあるコンピュータリソースをシェアーして使う考え方自体は古くからありますが、モバイル環境を含めた高速ネットワーク環境の整備と、クラウドと名前をつけて大手IT会社が普及活動に力を入れています。

IaaSの利用形態はVMを動かすため効率が悪く、今後はSaaSからPaaSの方向へ使い方が深化していくものと考えられています。

 

AWSはコミュニティーが発達しているが一般企業には向かない

現在のようにIaaSとして使っている段階ではAWSが首位を独走しているのも納得できます。しかし、上でも書いたように今後のクラウド環境の使い方がPaaSの方向に進んでいった時に、日本の一般企業がAWSのPaaSの機能を使いこなせるのだろうか、と気になっています。

PaaSはクラウド上の機能部品を組み合わせて使う利用形態ですが、それなりの使う技術・知識が必要となります。これまでITベンダーに丸投げしてシステム開発・運用してきた日本企業には社内にそのような技術者は殆どいないように思います。

私にはアマゾンAWSは一般的ないわゆるシリコンバレーのIT企業とは大きく異なるように見えます。それは、開発元のAWS自体が技術情報などを提供し、ITベンダーがそれを参照してシステム構築するようなものではなく、AWSのユーザーコミュニティーが結構な地方でも活動していて、AWSエコシステムが出来上がっています。

その中で各機能の使い方などに関する情報交換が活発になされ、一部のマニア的な人間によって形成されているのです。(少なくとも私にはそう見えます)どう見ても、現在の日本企業がシステム開発を委託しているような大手ITベンダーの方々には見えない、オープンソースに似たコミュニティーです。

そのようなシステム開発の仕方をした経験がこれまでない日系の大企業のIT部門には到底このような世界に入り込んで情報を入手し、独自開発していくことは出来ないように感じますし、そのようなボランティア的なシステム開発の仕方は怖くて外部委託もできないのではないでしょう。

これまで、オープンソースと言われる、世界中の多くのボランティアにより開発されてきたソフトウエアですら怖がり、高いお金を出して同じ機能のベンダー保障が付いた商用ソフトウエアを購入してきたのですから。

上記ははあくまでAWSをクラウド環境として使う立場であり、物流センターなどリテール基盤を持つアマゾンをフルに活用するようなビジネスモデルを考えられているのであれば、あえてチャレンジしてAWSを使う選択儒もあると思います。

 

世界的な開発投資競争になっている

現在の世界のクラウドベンダーは、データセンターやシステム機能開発、ネットワーク構築に毎年数千億円規模の投資を続けてにています。投資競争を続ける巨大な設備産業となった現状では、結局資本力が物を言う世界なのだろうと思います。

その意味で、現在のグローバルな投資競争に生き残れるクラウドベンダーはアマゾンAWS、Microsoft、Google、かろうじてIBM(Bluemix)位に絞られてきているようです。

あまりに寡占化が進んでもユーザー側の立場ではあまり面白くないので、日本の富士通などにも頑張ってほしいところではありますが、AIなどの基礎研究が必要な分野を考えると、着いていけそうにありません。

半導体デバイスの技術、ファブを持っている点で、エッジコンピューティングの方向ではある程度生き残れる可能性がある程度でしょう。

 

マルチクラウドの時代になる

上記のようにAWSが日本企業に合わないとすると、次はMicrosoftかGoogleになってしまいます。今後は自社データセンターのオンプレミス環境を含めた複数のクラウド環境をシームレスにあまり意識せず使うイメージになると思います。

どこか一社のクラウド環境を選択して使うと言うことではありませんが、Microsoftの一人勝ちになるのはあまり良くないと思います。

少なくとも、Ai開発のデファクト環境であるテンソルフローやモバイル環境OS、検索エンジンなど特異な戦略を採って成長してきているGoogleその他のクラウドベンダーにも是非頑張ってほしいところです。

 

 

 

 

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